研究課題/領域番号 |
26660109
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松田 幹 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20144131)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 難消化性 / 食物繊維 / 細胞内消化 |
研究実績の概要 |
初年度の研究において、醗酵食品に多く利用されるカビや酵母の細胞壁主要成分であるβグルカンを特異的に認識するデクチン1の昆虫細胞での分泌発現に成功し、一方、醗酵乳製品に利用されるビフィズス菌の培養条件の設定を終えた。そこで、今年度は、貪食細胞によって細胞内消化を受け、細胞外に再放出される難消化性食品成分を定量的に解析する技術を開発するために、微粒子状/可溶性βグルカンの高感度検出系を確立し、また、細胞壁多糖の分解産物であるオリゴ糖を質量分析で分析可能かを検証した。βグルカンに関しては可溶性受容体であるデクチン1に異なるタグを付加した2種の組換えタンパク質を調製して、これらを2-site ELISA検出系のプローブとして用いてβグルカンを高感度に定量する条件を設定した。また、これらのプローブを用いて、貪食細胞に取込まれたβグルカン微粒子を検出し、その動態を蛍光顕微鏡下で追跡した。一方、βグルカン以外の細胞壁成分などは特異的検出用プローブがないため、MALDI-TOF MSによって、グルカン糖鎖を検出・同定できるかを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの2年間の研究により、貪食細胞の細胞内で非酵素的消化を受けて低分子化/微粒子化して、細胞外に再放出された難消化性食品成分を定量的に解析する技術を開発するために、微粒子状/可溶性βグルカンの高感度検出系を確立し、また、細胞壁多糖の分解産物であるオリゴ糖を質量分析で分析可能かを検証した。βグルカンの検出に関しては高感度検出系と分析条件がほぼ設定できたが、質量分析による検出・同定についてはモデル化合物ではMS/MS測定によるフラグメント解析により同定が可能であるところまでは到達したが、検出感度に問題があり、さらに改善が必要である。また、貪食細胞から放出された分解産物が他の貪食細胞や腸上皮細胞に与える影響に関する細胞生理学研究については、まだ予備的な実験段階である。このような状況から当初の計画よりもやや遅れていると考える。今年度に遅れを挽回して研究目標である非酵素的細胞内消化の生理的意義の解明に向けて努力したい。
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今後の研究の推進方策 |
βグルカンの検出に関しては高感度検出系と分析条件がほぼ設定できたため、貪食細胞に粒子状/不溶性βグルカンを貪食させ、培地中に再放出された微粒子状βグルカンを定量的に解析し、種々の培養条件下で再放出された微粒子状βグルカンがナイーブな貪食細胞や腸上皮細胞、その他の免疫細胞に及ぼす影響を調べ、非酵素的細胞内消化の生理的意義を考察する。また、質量分析による検出・同定については、放出された分解断片/微粒子を培地中から濃縮・精製する方法を工夫して、MS/MS解析により高感度で同定する技術の開発を目指す。特異的プローブと質量分析法を組合せて貪食細胞から放出された難消化性食品成分を検出・同定し、腸管貪食細胞による非酵素的細胞内消化の生理的意義の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は遺伝子発現用コンストラクトの作製と質量分析の研究を集中して実施し、それにかかる経費が主な使途であったため、当初の計画に比べて若干の余剰が出た。前年度からの繰越分を加えた額を繰り越すこととなったが、測定、解析系が不十分な状態で細胞生理実験を進めることは適切ではないと考え、それらの研究を次年度に実施することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、機器分析に必要な経費に加え、計画している細胞生理実験に用いる種々に消耗品費に、繰越額も含めて研究費の全てを充当する予定である。
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