これまで2年間の研究により、βグルカンを特異的に認識するデクチン1の組換えタンパク質を用いて微粒子状/可溶性βグルカンの高感度検出系を確立し分析条件がほぼ設定できた。一方、質量分析法による、消化断片の網羅的解析については検出感度の問題が未解決である。そこで今年度は、貪食細胞に細菌由来βグルカン(カードラン)、酵母細胞壁(ザイモサン)などを貪食させ、培地中に再放出された微粒子状βグルカンを定量的に解析し、種々の培養条件下で再放出された微粒子状βグルカンを含む培養上清(馴化培地)がナイーブな貪食細胞に及ぼす影響を調べた。βグルカンを貪食したマクロファージの培養上清(馴化培地)はナイーブなマクロファージを活性化し種々のサイトカイン、ケモカインの分泌を誘導した。再放出された微粒子状βグルカンの寄与を明確にするために、この馴化培地を加熱処理しても活性が残存することを明らかにし、タンパク性因子の寄与をある程度否定できた。次に、可溶性組換えデクチン1を添加して活性化の抑制を調べたが、明確な結論は得られなかった。さらに、βグルカン、ザイモサンを貪食したマクロファージから分泌されるタンパク質を質量分析により解析し、種々の条件検討を経て、いくつかのサイトカイン、ケモカインの同定に成功した。これにより特異抗体によるELISAを用いることなく、難消化性食品成分を貪食した活性化マクロファージから分泌される培養上清中の液性因子を同定、解析することが可能となった。
|