細胞内異常分子の分解を担うオートファジーは、老化やそれに伴う幅広い疾病の予防戦略として注目される一方、生体における活性強度を簡便に評価する手段に乏しい。本研究では、細胞外分泌分子に着目し、オートファジー活性を反映する新規分泌性マーカー分子の探索・同定を目的とした。 平成26年度、培養細胞の培養上清に対して質量分析装置による網羅的定量解析を行い、Atg7依存的に分泌される分子としてpyruvate kinase M1/2 (PKM)を見出した。しかしPKMは、オートファジー活性化条件下だけでなく、bafilomycin処理によるオートファジー阻害条件においてもその分泌量が増加することが明らかとなり、マーカー分子としての応用は難しいと判断した。 平成27年度においては、PKMの分泌機構の解明を試みた。近年、オートファゴソームが細胞膜と融合し、小胞内分子を細胞外へ分泌する機構(exophagy)が報告され、PKMの分泌においても多くの共通点が認められたことから、まず、PKMのオートファゴソームへの局在性について検証した。アミノ酸飢餓条件においてPKMの細胞内膜構造への移行を認めたが、オートファゴソームを形成できないAtg7ノックアウト細胞においても同様の現象が認められたため、PKMはexophagyとは独立した機構を介して細胞外へと輸送される可能性が高い。続いて、網羅的定量解析においてPKMと同様の分泌挙動を示したスフィンゴ脂質 C-16 ceramideに着目した。異なる質量分析装置(LC-MS/MS)を用い、C-17 ceramideを内部標準として培養上清中C-16 ceramideの絶対定量を行ったが、その分泌量とオートファジー活性との間に相関性は認められなかった。尚、ceramideの定量分析のために、API3200質量分析装置(Sciex社)をレンタルした。
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