研究課題/領域番号 |
26660112
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢中 規之 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70346526)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | in vivo imaging / 肥満 / マクロファージ / 脂肪細胞 / serum amyloid A3 |
研究実績の概要 |
肥満脂肪組織内へのマクロファージの浸潤が脂肪組織の慢性炎症を惹起し,インスリン抵抗性などの病態発症に大きく寄与することと報告して以来,マクロファージの浸潤と脂肪細胞との相互作用が極めて重要な慢性炎症シグナルとされ,慢性炎症の予防や軽減させる方策が求められている.肥満白色脂肪組織の浸潤したマクロファージと脂肪細胞との相互作用に関連したin vivo因子を単離し,白色脂肪組織へのマクロファージの浸潤に対して鋭敏に反応する遺伝子群を精査した.その結果,serum amyloid A3(Saa3)遺伝子を最適な候補因子として選別し,Saa3遺伝子のスイッチオン・オフを利用した「白色脂肪組織におけるマクロファージの浸潤量を検知する仕組みづくり」に着手した.SAA3遺伝子のプロモーター領域(-314/+50)とルシフェラーゼ遺伝子を連結したSAA3-lucを作製し,レトロウイルス法を用いてSAA3-lucを安定形質転換したマウス脂肪細胞株3T3-L1細胞(SAA3-luc安定形質転換3T3-L1細胞)の樹立を行い,SAA3プロモーター領域(-314/+50)の転写活性が,単球・マクロファージ(RAW264.7細胞)との共存培養によって著しく上昇することを確認した.SAA3遺伝子のプロモーター領域(-314/+50)が浸潤マクロファージとの相互作用に応答する責任領域と考え,SAA3-lucをマウス受精卵にマイクロインジェクションすることでトランスジェニックマウスを作製した.さらに,脂肪組織特異的な蛍光観察を行うために, adiponectinプロモーター遺伝子にFP635遺伝子を連結させたadipo-FP635を構築し,同時にマイクロインジェクションを行なうことで,ダブルトランスジェニックマウスの樹立を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白色脂肪組織へのマクロファージの浸潤に対して鋭敏に反応する遺伝子群を精査した候補因子としてSaa3遺伝子を見出した.SAA3遺伝子のプロモーター領域(-314/+50)とルシフェラーゼ遺伝子を連結したSAA3-lucを作製し,マウス受精卵にマイクロインジェクションすることによってトランスジェニックマウスの樹立にまで至った.
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今後の研究の推進方策 |
SAA3-lucとadipo-FP635のダブルトランスジェニックマウスについて,両DNAの陽性ライン(F0マウス)を選別して繁殖を行う(予定では5ラインを計画している).繁殖の結果,産仔(F1マウス)についてゲノムPCRを行うことによって,両DNAが同一の染色体上に存在するラインを繁殖の簡便さから優先する.さらに戻し交配を繰り返すことで,ジェノミックバックグランドをC57BL系統に移し換える.作製したダブルトランスジェニックマウスを用いて,高脂肪食(HFD60)により肥満を誘導し,試験的にD-ルシフェリンの皮下投与によって非侵襲的in vivoイメージングに着手する.生体内イメージング解析は,広島大学動物実験施設に既に設置されている共通機器(NigthOWLII,ベルトールド社製)を利用する.
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次年度使用額が生じた理由 |
レトロウイルスの作製,トランスジェニックマウスの樹立まで研究を遂行したが,lineの選定に至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
トランスジェニックマウスのlineの選定を進めるため,動物維持や繁殖を含め,動物飼育費として使用する予定である.
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