研究実績の概要 |
我々は機能性食品としての昆虫食の認知と普及を目指しているが, 栄養過多人口が飢餓人口を上回り, 食糧危機と同時に矛盾する事案である肥満問題も解決しなければならない時代となっている. ここで昆虫食の栄養面ばかりを強調しすぎることは飽食の現代日本で必ずしも高評価を受けないばかりか逆に避けられる可能性もある.そこで, 高栄養価のみならず健康増進, 疾患予防などに寄与する食品機能性が必要となってくる. 昆虫の有用成分についてはそれほど研究されてこなかった上, 食品として研究されたこと自体ほぼ無かったため, その食品機能性は未知と言っても良い. まず昆虫が含有する可能性のある機能性成分について, カロテノイドに注目しHPLCを用いて成分分析を行った. その結果, 含有するアスタキサンチン量はキリギリス, トノサマバッタ, ショウリョウバッタ, コオロギの順に多く, エビ身と遜色ない含量であった. 一方, βカロテンはエビでは検出できないほどの含量であったが, ショウリョウバッタには乾燥重量100 gあたり6~8 mgと豊富に含まれていた. 次に実際に昆虫食が体に良い影響, 例えばメタボリックシンドローム(以後メタボ)の予防改善に効果があるかどうかを検証するため,凍結乾燥トノサマバッタを用いてマウスへの食餌実験を試みた. マウスに高脂肪食を与えることでメタボ状態をつくり, 同時にトノサマバッタを与えたグループと, その対照群として摂取カロリーが等しくなるように高脂肪食+ 通常食を与えたグループとを比較したところ, トノサマバッタを与えたグループの体重増加と脂肪蓄積が抑制されていた. これはトノサマバッタにはメタボ予防に効果的な何らかの機能性成分が含まれている可能性を示唆する. これらの結果より, 昆虫食の機能性食品としての認知と普及の可能性が示された.
|