研究課題
“標識化”に依存しない簡便な分子イメージング法の確立は、既存法では取得困難な“見たい分子”の動態情報を与え、機能性食品の研究開発過程の諸問題(時間・コスト・労力浪費や特異性欠如、精度が低く限定的な作用機序解析)を解決できる基盤技術の創出につながる。そこで本研究では、申請者独自の組織内代謝動態を非標識で捉えるマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)イメージング法を、その最大の技術的ボトルネックであり、興味分子の検出(イオン化効率)に最も影響を与えるにも関わらず未開拓なイオン化助剤“マトリックス”の独自開発(系統的かつ理論的活用法の創出)により先鋭化して、疾病リスク低減効果を有するポリフェノールを中心に複数の食品成分の組織内代謝を非標識で同時に可視化できる複合動態イメージング法を創出する。このような目的の達成のために、約80種類以上からなる有望な化合物(新規合成品および市販品)からなる“マトリックスライブラリー”を作成し、対象化合物群(70種類以上のファイトケミカルならびに緑茶抽出物)との総当たりでのMALDI-MS測定を実施した。その結果、対象化合物のイオン化の可否やイオン化効率がマトリックスの種類によって全く異なっていることが判明した。また、その違いがマトリックス側と対象化合物側の構造的な違いと相関しているケースも認められた。現在、これらの一連のデータをもとに、化学構造記述子を用いた定量的構造機能相関解析(QSPR)を試みている。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りに、マトリックスの化合物ライブラリーを作成し、これらを対象化合物群との総当たりでのMALDI-MS測定を行い、さらに、QSPR解析の段階に進んだため。
本年度得られた成果のQSPR解析により、対象化合物をイオン化可能なマトリックスの構造的特徴、あるいは、対象マトリックスでイオン化可能な化合物の構造的特徴を理論的に説明できるシステムを創出する。本システムの情報に基づいて選択された候補マトリックスを用いて、特定の対象化合物群の組織切片レベルでのイオン化効率を確認後、それらの摂取後の臓器レベルでの分布を質量分析イメージングにより可視化を試みる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件)
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