研究課題
最近、地表付近(対流圏0~11 km)のオゾン(O3)濃度が上昇し、越境大気汚染が指摘されている。O3感受性のブナでは窒素沈着量が増加するとその感受性がさらに増加し、反対にニホンカラマツでは耐性の増加することが解明された。この指摘はカラマツ属の土壌環境に対する応答の点から造林手法に手がかりをもたらすと思う。大気中の二酸化炭素濃度(CO2)は増加し続け、高CO2環境では気孔が閉じ気味になるため、空気より重いO3の取り込みは軽減され、成長抑制は軽減されるであろう。さて、カラマツ属の成長はECMに依存した成長を行う。特に、リンの欠乏症状が出やすい火山灰土壌ではECMとの共生は必須である。F1を2生育期間、上記の高CO2とO3の組み合わせで育成し、その成長と共生菌類の組成を調べた。成長は高CO2区>対照区>高CO2+O3区>>O3区の順に大きかった。感染したECM種数も、この順に多かった。すなわち高CO2区ではイグチ属を中心にラシャタケ属、Cadophora属、ラッカリア属、イボタケ属などが感染していたが、高O3区ではイグチ属が80 %以上を占めていた。生育環境が悪化し光合成が抑制されても、結局、カラマツ属のスペシャリストと考えられるイグチ属は不可欠なパートナーなのだと感じる。マツ属のコツブタケ同様にカラマツ属にはイグチ属ECMは不可欠であり、緑化資材としての期待ができると考えている。春先の高温乾燥の後遺症もあって、カラマツ苗が入手出来ないくらい「造林熱」が再来している。低コスト造林ではコンテナ苗の量産が期待されているが、その肥料は農業用である。リン資源の枯渇が予想される中で、リン含有率の高い農業肥料への依存は避けるべきである。このためには、土壌からリンと水分を宿主へ提供するコツブタケのように緑化資材として販売されるECMの分離・利用が期待される。
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