研究課題/領域番号 |
26660121
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 秀之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70312395)
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研究分担者 |
瀬々 潤 独立行政法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 主任研究員 (40361539)
小倉 淳 長浜バイオ大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60465929)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム / RNA-seq / 次世代シーケンス / リファレンスゲノム / 機能注釈 / ブナ |
研究実績の概要 |
ブナ目のリファレンスゲノムの構築法を研究するにあたり、ブナのドラフトゲノムの拡充と精緻化は研究精度を高めるために必須である。初年度はブナのドラフトゲノムの拡充を目的として、ブナのゲノムDNAの10 kライブラリーを作成し、次世代シーケンス解析(Illumina社製Hiseq2000)によりDNA配列を明らかにした。再ゲノムアセンブル(ALLPaths-LG)を行い、Contig最長が2 Mbp、Contig数(>1000 bp)が6,321、N50値(Contig)が318 Mbp、GC率が35.9%のドラフトゲノムを得た。これらは、既存のブナドラフトゲノムの配列よりも拡充した品質であった。並行して、最新の一分子リアルタイムシーケンス法(PacBio)によるブナのゲノムDNAシーケンス解析を行った。全塩基数が3.11 Gbp、Contig最長は24Mbp、Contig平均長は1569.5 bp、Contig数が1.98 Mbp、GC率が35.7%であった。 ブナと植物16種(キュウリ、リンゴ、モモ、イチゴ、ミヤコグサ、メディカゴ、ダイズ、ユーカリ、ブドウ、イネ、ポプラ、シロイヌナズナ、オレンジ、カカオ、アムボレラ、ドイツトウヒ)の核酸およびタンパク質の配列データを核ゲノムデータベースから入手した。ブナの全遺伝子に対してオーソログ遺伝子を同定するために相同性検索を行い、ベストマッチ遺伝子によるオーソログ遺伝子リストのデータベースを構築した。 遺伝子ファミリーとしてPEBPファミリーとbHLHファミリーを取りあげ、ブナのドラフトゲノムならびに既知の植物ゲノムデータベースから遺伝子配列の探索を行い、ファミリー内の遺伝子数の違いと系統解析を行った。いずれのファミリーに於いてもブナのパラログ遺伝子の数が少なく、遺伝子ファミリー内の機能分化に進化的な変異があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブナのドラフトゲノムの拡充に於いては、N50(Contig)が318 Mbpに達し、一般にドラフトゲノムとしてコンセンサスを得るのに十分な配列情報の水準に達した。またオーソログ遺伝子リストのデータベースの構築を完了することができた。以上はブナ(Fagus crenata)のドラフトゲノム配列がブナ目のリファレンスゲノムとして有用な機能情報量を持つレベルに到達したと考えられる点は初年度の目標を概ね達成できた理由である。
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今後の研究の推進方策 |
IlluminaプラットフォームとPacBioプラットフォームの両者のブナ・ドラフトゲノムの配列データの再アセンブリを実施して、ブナのドラフトゲノム配列を拡充させる。 ブナのドラフトゲノムの精緻化のため、RNA-seqデータに基づいて遺伝子推定を実施する。 遺伝子の機能推定を配列と発現パターンの両方を基準に行うことで機能推定の精度向上を図ることが最終目標である。幾つかの遺伝子ファミリーを対象に発現パターンからの機能推定について検討を行い、発現パターンから機能推定についての妥当性を解析をして良好であればアルゴリズムを設計・提案する。 ブナのドラフトゲノムに関する研究論文を投稿する。また論文化にあわせて未公開のブナゲノムデータベースのウェブサイトを公開する。
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