研究課題
森林における腐植酸鉄の流出を規定する要因を明らかにするために,京都府北部の広葉樹林内にある複数の集水域を対象に,渓流水中の溶存全鉄(DFe),二価鉄,三価鉄,溶存有機態炭素(DOC)濃度,および溶存有機物の三次元励起蛍光特性(EEM)を測定した。全集水域を通してDOC濃度とDFe濃度との間に正の相関が認められた。また,EEM-PARAFAC解析から抽出された他生性腐植様物質(フルボ酸様)の蛍光強度とDFe濃度の間に強い正の相関が認められ,フルボ酸と鉄の錯体が渓流へ流出していることが示唆された。集水域の地形と水質の関係から,渓流沿いに湿地状地形を有する場合にDFe濃度が高く,DFeに占める二価鉄の割合が高かった。このことから,渓流近傍における還元的で有機物に富む湿地状地形の存在が,DFeの流出に重要であることが分かった。河川流下過程におけるDFeの挙動を明らかにするために,気仙沼湾にそそぐ4つの河川と,気仙沼湾内の4地点の海水を対象に,DOCとDFeの時空間分布を解析した。河川水質と土地利用の関係から,森林よりも耕作地や市街地がDFeのソースとして重要であった。河川下流域から汽水域にかけてDOC濃度や腐植様物質はほぼ変化しなかったのに対し,DFe濃度は60%以上低下し,塩分上昇に伴う鉄の凝集効果がみられた。濃度や蛍光強度の時間変化を降雨量との関係から解析したところ,陸域河川では降雨出水時に腐植様物質の蛍光強度とDFe濃度が上昇することが分かった。気仙沼湾では,河口に近い地点ほど腐植様物質の蛍光強度と全鉄(TFe)濃度が高く,降雨時にその傾向がより強かった。DFe濃度の時空間分布には,河口からの距離や降雨履歴の影響がみられなかったことから,DFeは,陸域から特に降雨出水時に高濃度で河口域に流出するが,汽水域においてその多くが凝集沈殿し,海域にほとんど到達しないことが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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