近赤外反射スペクトル測定によって、土壌型の判定および土壌炭素濃度が推定する手法を開発するのが本研究の目的である。全国から収集された3万5千点あまりのサンプルから、土壌型が判定されかつ土壌炭素濃度が明らかな2300個程度の土壌サンプルを抽出し、近赤外反射分光法に適用できるように整理した。これらのうち粒径が粗いものについては、めのう乳鉢による粉砕処理を行い粒径を統一した。これらのサンプルについて近赤外反射スペクトルの採取をおこなった。一部のサンプルについては、過去の炭素含量の分析値が間違っていたため、再分析をおこなった。これらのデータをケモメトリックスソフト上のデータベースに入力し、多変量解析を行った。その結果、性質が大きく異なる土壌型同士ではスペクトルの主成分因子2つを使用して区別できる可能性があったが、土壌の大半を占める褐色森林土がこれらの土壌と区別できないことが明らかになった。この結果から、反射スペクトルによって土壌型を区分することは現時点では不可能と判断した。スペクトル成分のPLS回帰によって土壌の炭素含量を推定したところ、外れ値等を除去しない段階で77%の変動を予測することができた。また、シュウ酸可溶鉄やシュウ酸可溶ケイ酸量も同等の予測が可能であった。以上の結果から、近赤外反射スペクトルから土壌型の判定はできないものの、精度は良くないながら炭素含量や鉄・ケイ酸などの定量は可能であると考えられた。
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