研究課題/領域番号 |
26660135
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
中村 克典 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, グループ長 (40343785)
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研究分担者 |
富樫 一巳 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30237060)
山野邉 太郎 独立行政法人森林総合研究所, 東北育種場, 主任研究員 (60370855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マツ材線虫病 / 宿主感受性 / 流行様式 / マツノザイセンチュウ / マツノマダラカミキリ |
研究実績の概要 |
本研究では、マツ材線虫病被害が進行しているマツ林で被害木数の変動をモニタリングしつつ、気候条件が同一と見なせる近傍でのマツ苗木へのマツノザイセンチュウ接種実験により定量的に把握される宿主感受性の変動との対応を検証する。また、被害量変動に関わるパラメータとして、被害調査林分での媒介昆虫発生数を調査しつつ、マツノザイセンチュウの毒性の変動の計測に向け被害木および媒介昆虫の保持するマツノザイセンチュウを分離・培養する。 この目的を達するための被害調査地として、当初想定していたマツ林で被害が終息段階に入ったと判断されたので、接種実験実施場所である岩手県林木育種場に近い流行初期の林分に調査地を設定し直し、被害量調査を開始した。また、調査地に当年発生したマツ枯死木、および周辺被害地で採取した被害丸太から脱出した媒介昆虫の保持線虫について、各数系統の分離・培養に成功した。これらの線虫については、今後の調査で追加して分離・培養される線虫とともに最終年度に一斉にマツ苗木への接種実験に供し、毒性の程度を定量する予定である。また、被害量調査の進捗に伴い、次年度より岩手県林木育種場でのマツノザイセンチュウ接種実験を開始する。 本研究では、上記各種調査で定量したパラメータについて、モデルを用いて被害量変動への寄与程度を評価する。この目的を達するためのモデルの構築に向け、研究担当者の保持する既往の被害量変動データと仮想のパラメータを用いた予備的なモデルの有効性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では、研究担当者が継続調査していた既存のマツ枯損被害調査地をそのまま使用する予定であったが、被害進展が著しく本研究での3年間の調査で十分なデータを得られない可能性が考えられたため、より理想的な条件の調査地を新たに設定し直すことにした。このため、被害量調査の開始が2014年秋にずれこみ、感受性把握のためのマツノザイセンチュウ接種試験も2年目から実施することになった。以上により、本来なら研究期間中3年分のデータを蓄積できるところが2年分に縮小したが、このデータをもって挑戦的萌芽研究としての目的である「宿主感受性および感染個体の感染能力に関わるパラメータの定量的把握」ならびに「モデルによる各種パラメータの寄与程度評価」は達成できると予想している。
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今後の研究の推進方策 |
調査地の再設定による研究進捗の遅れが生じているものの、予定されている研究内容については変更はなく、被害調査地での被害発生モニタリングと媒介昆虫発生調査、マツノザイセンチュウの分離・培養、宿主感受性把握のためのマツノザイセンチュウ接種試験を連年実施、蓄積した分離・培養マツノザイセンチュウの毒性定量のための一斉接種試験、流行様式への各種要因の寄与程度のモデルによる評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の遅れにより、マツノザイセンチュウ接種実験にかかる苗木代、植栽経費、人件費等が未使用となり、また研究打ち合わせのための旅費の執行が予定額より少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
マツノザイセンチュウ接種実験自体は研究期間を通じて1回分少なくなったが、苗木代や植栽経費が当初見積もりより高額となっていることから、繰越金を持ってこれに充てる。また、研究分担者山野邉の遠隔地への異動による旅費の掛かり増し分に充当する。
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