研究課題/領域番号 |
26660142
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 裕志 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (50553989)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオフォトン / 木材腐朽菌 / リグニン / バイオマス / 化学発光 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、自然界における一次の木質分解者である木材腐朽菌のリグニン分解機構に関する基礎知見を、これまでほとんど試みられてこなかった手法により解析することを目的としている。バイオフォトンとは生物活動に伴い生じる微弱な光であるが、その起源は十分に解明されていない。 最近、木材腐朽菌の一部が木質分解時に相当量のバイオフォトンを発することがわかってきている。そこで本研究では、木材腐朽菌を培養プレート上において木板とともに培養し経時的な変化をバイオフォトン検出によるフォトンイメージングにより取得した。この際、測定条件、温度調整などを行い安定した条件で観測を行ったが、温調により生じるアーティファクトの影響について今後検討が必要である。連続的な観測により腐朽過程に伴う腐朽菌のアクティビティをバイオフォトン検出によって可視化することができた。腐朽過程におけるバイオフォトンイメージングの連続的な取得を行う一方で、菌体外代謝物、木質構成成分の構造変化をLCーMS, NMRを用いて分析した。さらに、質量分析法によるマスイオン検出によるケミカルマッピングによる観測手法について条件検討を進め、リグニン分子のオリゴマー断片の検出に成功したことから、木質内分子の局在解析への展望が見えてきたと考えている。以上により、木質生分解反応における多面的な知見と鍵因子の探索ツールとしての有効性について検討を行った。 本研究課題の成果の一部は国際論文誌に発表(Nishimura et al., Chem. Phys. Lipids, 2017)し、国際シンポジウム講演および国内シンポジウム発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度制御時に生じるアーティファクトのバイオフォトン検出に対する影響については課題が残ったが、質量分析法を用いたマスイオン検出によるケミカルマッピングによる観測手法については実際にデータの取得まで進展した。
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今後の研究の推進方策 |
温度制御時に生じるアーティファクトのバイオフォトン検出に対する影響を回避するため、装置調整を行うとともに固体培養における培地調製に工夫を加える。これにより、これまで以上に安定的、良質のフォトンスペクトルを取得できると期待される。 また、質量分析法によるマスイオン検出によるケミカルマッピングによる観測について、腐朽過程における、経時的なデータ取得を行う。以上のデータを統合して木材腐朽メカニズムに関する新しい知見を得る。成果は研究論文としてとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
木質のバイオフォトン検出という新規性の高い手法を用い、経時的なデータの取得に成功した。しかしデータ解析の結果、予想と異なる傾向が見られたためその原因追及を行った。その結果、装置内部の温調システムの工夫で温度制御には成功した一方で、試料プレート内の温度差および長時間の観察で生じる水滴が無視できない影響を与えていることがわかった。これを改良し研究をまとめるため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の問題を回避するため、固体培養方法における培地成分の工夫、および培養容器と温調システムの改良をおこなう。このための物品費を計上している。また、連続的な観測、および多種の条件での検討を行うため、一定期間研究支援のための技術補佐員を雇用し安定的なデータ取得を行う。その他、研究成果の学会発表、研究打ち合わせの旅費および論文作成の諸経費を支出する予定である。
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