研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者らが見出した「大過剰のカルシウムイオン添加した酸性下でカルスプロトプラストを培養すると、細胞外にナノサイズの中空糸が束となったマイクロサイズ幅(14μm)のカロース(β-1,3-グルカン)巨大繊維を生産・噴出する」という現象をモデル化し、植物ナノ繊維化の半人工プロセスを提案しようとするものである。 最終年度である本年度は、プロトプラストをバーストさせて得られた細胞断片として、膜タンパクの機能解析を可能とするゴーストを調製し、それを用いて半人工プロセスの構築を目指した。すなわち、このゴーストの一細胞を固定し、カロース繊維を産生する生物(プロトプラスト)と人工反応経路(マイクロチャネル)を一体化させた、半人工マイクロチャネルデバイスの構築を試みた。 この半人工デバイスによるカロース産生系を用いることによって、カルスプロトプラストを培養した大過剰のカルシウムイオン添加した酸性下の培養条件を再現したところ、生細胞の場合と同様に、長さ約500μm、幅約35μmの繊維状物質が得られ、しかもABF染色により緑色の蛍光を示した。このことは、マイクロチャネル内に固定したゴーストからカロース含有物質の合成が生細胞の場合と同様に再現されたことを示す。 以上の結果は、今後さらに、pHやCa2+濃度の変化に対するプロトプラストのストレス応答を系統的に検討することを可能とし、カロース繊維産生に関与する環境因子の解明に新たなアプローチを加える。
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