単離リグニンに含まれるエノールエーテル構造の紫外線照射による異性化とリグニンの熱特性の関係を検討した。リグニンモデル化合物による実験では、[Z]型のエノールエーテルが紫外線照射で[E]型に異性化し、異性化にともなう融点の低下が明らかになった。しかし高分子のリグニンでは、エノールエーテル構造の存在は確認できたが、紫外線照射による異性化速度は、低分子モデル化合物に比べて非常に遅いことがわかった。また長時間の紫外線照射では、異性化以外のリグニンの化学構造変化も示唆されたことから、紫外線照射でリグニンを異性化し、熱特性を変化させるには異性化に使用する溶媒の検索などによる異性化効率の改善が必要である。
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