研究実績の概要 |
本研究では、網羅的メタゲノム解析手法を用いて、深海・地殻内をはじめとする様々な極限環境中の可動性遺伝因子プラスミドの全体像を明らかにし、微生物群集生態系におけるプラスミド遺伝子プールの機能的役割の解明を目指している。本研究期間において、東北沖水深500メートル下の深海堆積物表層環境に由来する深度別2試料からプラスミドの回収を試みた。約20 gの各堆積物試料に対して滅菌人工海水を加え、ShakeMasterを用いて1分間撹拌を行い、懸濁液を調製した。この懸濁液をハンディーソニックにより1分間超音波処理した。700 ×gで5分間遠心し、堆積物粒子を除く上清を回収した。さらに10,000 ×gでの遠心を5分間行い、得られた微生物細胞ペレットをフレッシュなTEバッファーに再溶解した。回収した細胞試料をアルカリ・SDS法とクロロホルム-イソプロパノール沈殿精製を組み合わせた手法に供し、プラスミド抽出を行った。Plasmid-Safe DNaseおよびRNase処理により、染色体ゲノム等の不要核酸を分解・除去した。phi29ポリメラーゼによる多重鎖置換増幅法を用いて、抽出プラスミド試料の全ゲノム増幅を行った。Qubitを使用した蛍光定量法により、抽出プラスミドの核酸量を測定した。その結果、いずれの試料からも1マイクログラム程度のプラスミド増幅産物が認められ、メタゲノム解析への必要量を確保できた。次世代シークエンサーの使用によって、プラスミド遺伝子配列の大量取得が完了した。今後、BLAST相同性検索など一連の配列データ解析を進めていく予定である。
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