珪藻赤潮構成種の一種であるChaetoceros tenuissimusがリン酸塩制限下で特異的に発現誘導する遺伝子(アルカリフォスファターゼ:AP)を標的として,NASBA法用のプライマーならびに核酸クロマトグラフによる検出用プローブの作製を行った。そしてAP遺伝子検出のための最適条件の検討を行った。なお,NASBA法とは,2種類のプライマー,3種類の酵素を用いることで,標的とする配列を15分以内に1億~1000億倍に増幅させる等温核酸増幅技術であり,RNAの検出に有効とされている。一方,核酸クロマトグラフ法は,特異的にラテックス標識された標的RNA配列をメンブレン上に展開させ,さらにその途中に固定されたオリゴDNAに捕捉し,標的配列特異的サンドイッチハイブリダイゼーションする事により,サンプル中の標的RNA配列存在の有無を目視判定するための技術である。実験の結果、アクチン遺伝子をハウスキーピング遺伝子とした場合,対数増殖~リン酸欠乏による定常期の珪藻いずれからも核酸クロマトグラフによりその存在が確認された。一方,AP遺伝子に関しては,対数増殖期にはそのシグナルは検出されなかったものの、定常期には核酸クロマトグラフによる強いシグナルが検出された。定量PCR法においてもリン酸欠乏による定常期にAP遺伝子が強く発現するという結果が得られた。この事からは、NASBA法と核酸クロマトグラフを併用した植物プランクトンの簡易生理診断が可能である事を示唆している。今後のさらなる改良により,本検出手法の高度化が期待される。 また、ノリの遺伝子代謝マップから、、窒素代謝系の遺伝子5つ、リン代謝系の遺伝子6つ、ハウスキーピング遺伝子候補6つを同定することに成功した。今後、これらの遺伝子を用いたNASBA法の開発により、赤潮・ノリ色落ち診断手法開発に繋がるものと推察される。
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