研究課題/領域番号 |
26660159
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
良永 知義 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20345185)
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研究分担者 |
和田 新平 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (90220954)
倉田 修 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (90277666)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シャコ / 病理検査 |
研究実績の概要 |
東京湾産と伊勢湾の天然シャコを2014年6月に入手し、外観観察による検査を行っところ、全ての個体の鰓や腹肢の一部に病変が見られた。この病変は個体ごとに進行度合いが異なっていたが、鰓糸の変色、鰓糸の脱落、鰓全体の脱落、腹脚の変色。脱落を特徴としていた。 病シャコの鰓からの真菌・卵菌の分離と血リンパからの細菌分離を試み、一部の個体の腹肢を病理組織検査に供した。分離された真菌、卵菌のrRNA領域の遺伝子配列により、卵菌は全て、シャコへの病害性が知られている卵菌Halioticida noduliformansに同定された。真菌2種、常在菌2種が比較的高頻度に分離さたが、これらの病原性は不明であり、今後の課題である。病理組織学検査では、組織表層付近に真菌の増殖病巣、組織深部に卵菌の増殖病巣が観察された。 H. noduliformans検出用のプライマーを設計し、病変部位から抽出したDNAをテンプレートとしてPCRを行い、H. noduliformans遺伝子の検出を試みたが、病組織からでも検出率が低かった。そこで、DNA抽出液のキレート処理やnested-PCRを試したところ、一部のサンプルからはH. noduliformansの遺伝子が検出され、抽出・反応条件ならびにプライマーの改良が必要であると判断された。 伊勢湾産シャコを2014年8月、11月、28年2月に入手し検査したところ、病シャコの割合は6月より低く、20-40%を推移した。2002年6月に東京湾で採集されたホルマリン標本の観察では約30%のシャコの同様の病変が観察された。 本年度は、資源が減少している東京湾ならびに伊勢湾のシャコに類似した鰓の病変が季節によっては高率に存在していることが明らかになった。卵菌H. noduliformansがその病原体として強く疑われるが、特定のためにはさらなる調査・研究が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、シャコだけでなくクルマエビについても急性ウイルス血症の感染状況検査を行う予定であったが、病シャコの割合が予想以上に高く、シャコ資源への影響が強く疑われたため、本年度はシャコに集中して研究を実施した。そのため、クルマエビについては研究の準備は行ったものの、実質的研究は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
シャコについて、病原性が有することが明らかになっているH. noduliformans以外にも病原性を有する可能性がある真菌、細菌が検出された。一方で、これらの真菌、細菌は腐生性あるいは二次的な日和見感染体である可能性も高い。これらの真菌、細菌が病変に関与しているかどうかを明らかにするため、病状の軽い個体について、病理組織学的検査に注力する。また、他の資源状況が悪化している海域ならびに資源状況が比較的安定している海域のシャコについても、病理学的検査を行い、疾病の資源量への関与について検討する。 病シャコが高率に存在していながらこれまでほとんど研究されていないシャコの疾病を研究の中心に置くこととする。クルマエビについては、当初三河湾、浜名湖産クルマエビの両方について急性ウイルス血症の検出を行うことも計画していたが、研究資源をシャコの疾病に移すことから、浜名湖産クルマエビを中心に調査を進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
シャコの病理組織学的検査の費用として120,000円を計上していたが、本年度は病理組織検査に供することのできる個体が少なく、この目的のために新たに物品を購入する必要が生じなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、シャコの病理組織学的検査に重点を置くため、そのために必要な物品ならびに活シャコの購入に充てる。
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