日本各地で漁獲量が激減しているシャコについて、漁獲量の減少要因を感染症という観点から調査した。 平成26年度、27年度の東京湾並びに伊勢湾のシャコについて調査をした結果、鰓に真菌Plectosporidium oratosquillaeと卵菌Halioticida noduliformansが高率に感染していた。28年度は漁獲量の減少が大きい瀬戸内海の水島湾と播磨灘、ならびに漁獲量が高いレベルで維持されている石狩湾について調査を行った。その結果、どちらの群でも鰓の褐色化と脱落という病態が高率に観察され、水島灘ではP. oratosquillae、播磨灘ではH. noduliformansの感染が認められた。一方、石狩湾シャコでは真菌、卵菌の感染は認められなかった。 P. oratosquillaeの病原性を確認するため、P. oratosquillaeが感染していた東京湾シャコと水島灘産シャコを高水温状態で約7週間飼育した。その間、個体別に病状の進行を観察した。その結果、どちらの場合でも、鰓の着色や脱落といった病態が進行しながら死亡し、死亡率は前者では90%以上、後者では70%以上に達した。これらの飼育実験から、P. oratosquillaeはシャコに対して致死的であることが示唆された。 26年度、27年度に引き続いて、東京産シャコについて、病態を示す個体の割合と個体群サイズの季節的推移を定量的に把握した。その結果、東京湾では夏季に病態を示す個体が増加し、同時に個体群が低くなり、2回目の産卵期の一歳春まで生残できる個体がほとんど見られなかった。この1歳春以前の個体群の消失が、東京湾での資源量の減少に強く関与している可能性が示された。
|