研究課題
シャコ幼生について、様々な生物分類群の28S rDNAを増幅するユニバーサルプライマーと、ホスト生物(シャコ)のDNA増幅を特異的阻害するPNAプローブを用いてPCRを行い、クローンライブラリ法により増幅産物の塩基配列を決定し、幼生の食性を解析した。微小幼生の消化管内容物の摘出は困難なので、消化管と周辺組織を合わせて摘出し、DNAを抽出した。発達段階初期の微小な幼生は複数個体をプールして1検体とし、計22検体を解析した。捕食者のシャコ自身の塩基配列の検出率は21%で、PNAの使用はホスト生物のDNA増幅阻害に効果があった。シャコ以外に検出された生物分類群(検出率)は、刺胞動物(47%)、菌類(41%)、植物プランクトン(29%)、動物プランクトン(18%)および尾索動物(6%)であった。これらの生物の一部には、シャコ幼生の体表に付着した生物や、消化管内の常在菌等が検体に混在した可能性もある。このため大型幼生1個体を用いて、消化管を含む頭胸甲、消化管を除いた頭胸甲、および消化管を含まない腹節~尾節、の3部位について、検体を純水により洗浄した後にDNA抽出し、PNAを用いてPCR増幅産物の塩基配列を解析した。消化管を含む頭胸甲組織からは、橈脚類と珪藻類が検出された。腹節~尾節組織からは渦鞭毛藻類と刺胞動物が検出されたが、消化管組織において検出された生物は認められなかった。一方、消化管を含まない頭胸甲組織からは、消化管で検出して珪藻類が認められ、刺胞動物も検出された。よって、消化管試料では消化管内容物以外に体表付着した生物のDNAを検出する可能性がある。以上の結果より、PNAを用いて幼生の餌生物を調べることは可能であるが、消化管以外の体組織を含む検体について解析する場合は、消化管を含まない組織における解析もあわせて実施し、体表付着由来の生物種判別を行うことが必要である。
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