研究課題/領域番号 |
26660170
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
佐野 元彦 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (00372053)
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研究分担者 |
近藤 秀裕 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (20314635)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋生態 / 海洋微生物 / ファージ / マリンゲノム / メタゲノム |
研究実績の概要 |
ごく沿岸で行われる魚介類養殖では、微生物環境が極めて重要であることが知られているが、細菌に感染するウイルス(ファージ)が養殖微生物環境に及ぼす影響についてはほとんど分かっていない。そこで、本研究では、クルマエビ養殖場を対象に、1)飼育水等の細菌とその感染ファージを分離・培養してそのDNAデータベースを構築し、2)飼育水等の細菌とその感染ファージの動態をサンプル中に含まれる全体のDNA配列データ、すなわちメタゲノムデータとして解析することから沿岸の海洋微生物生態系におけるファージの細菌叢への影響を解明することを目的とする。 平成26年度では、 1)熊本県下のエビ養殖場を選定し、飼育水およびエビ腸管内から、計134細菌分離株を選択・保存するとともに、リボゾームRNA配列を得た。また、エビ病原体として、Vibrio penaeicidaを病エビより分離・保存した。 2)得られた細菌を用いて、エビ養殖場の飼育水等からファージの分離を試みた結果、ビブリオ属細菌に感染する計4種のファージが分離できた。これらは形態学的にシフォウイルス属とポドウイルス属に分類された。 3)エビ養殖場の飼育水からプランクトン・細菌・ウイルスをフィルター上に捕集し、DNA抽出法を検討した。プランクトンと細菌では、界面活性剤とフェノール・クロロホルムを用いたCTAB法が、ウイルスでは、タンパク分解酵素消化とフェノール・クロロホルム抽出が良好な結果を与えた。季節毎にサンプリングした飼育水からこれらの抽出法でDNAを準備し、次世代シーケンサーでDNA塩基配列を取得した結果、季節で異なる微生物組成を明らかにできた。このとき、飼育水20mL程度からデータ取得が可能であることが判明した。また、冷蔵して大学に送付する間に細菌叢が変化することも明らかとなり、現場で直ちに濾過・捕集する必要があることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度に計画した項目は概ね実施できた。特に、エビ養殖場の飼育水では、プランクトンや有機物が多く、これを濾過するのは労力・所要時間ともに必要で、多くのサンプルを処理することはできない。しかし、本年度の検討により、細菌では20mL程度の飼育水があれば、メタゲノムDNAデータが取得可能であることが分かったことは、今後のサンプル処理をより容易にする。一方、ファージのメタゲノムデータ取得では、ウイルスDNAの断片化が安定しないため、物理的な破断法も試みる予定である。本年度のファージの分離数は、予想を下回っているが、検討の結果、冷蔵保存したサンプルからの分離効率が低いことが原因であると思われ、得られた飼育水等のサンプルに分離用の細菌を直ちに投入することにより、比較的高率に分離できることが判明した。この方法を用いることにより、来年度には、さらに多くのファージが分離可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も計画通りに進める。検討の結果からファージの効率の良い分離方法が判明しており、次年度には分離ファージ数を増やし、ファージの塩基配列登録が順調に進むものと考える。加えて、エビ養殖場での細菌叢の日変化を捉える詳細な解析を加えるため、6時間程度間隔での連続サンプリングを行う予定である。また、エビ飼育実験水槽内での細菌とファージの動態についても検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通り執行したが、試薬等の値引きなどにより最終的に端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬等消耗品に使用する。
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