研究課題/領域番号 |
26660174
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
木村 郁夫 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (30443344)
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研究分担者 |
山本 淳 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (00336330)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 寄生体寄生魚 / Ichtyophonus hoferi / トリメチルアミンオキシド / Aspolin |
研究実績の概要 |
魚類では寄生虫の感染により、資源量の減少や食品利用において重大な問題が発生している。寄生虫が感染した水産物を水産加工原料として利用する場合には、プロテアーゼ活性の亢進による肉の軟化やあるいは魚肉の硬化が経験されている。これらの課題を解決するためには、それら事象の発生機序を明らかにする必要がある。既存の研究では寄生虫自体が魚肉品質に影響すると考えられてきているが、本研究から宿主側の生体防御機構が作用し、それが魚肉品質に影響を及ぼしていることを示す結果が得られた。 本研究では、寄生体としてIchtyophonus hoferi(Ihと略)が寄生したスケトウダラのフィレを米国のアラスカにて収集した。寄生率は非常に低く、膨大なスキンレスフィレより選び出した。一方、同じ寄生体のIhが寄生したニジマスを山梨県の養鱒場にてサンプリングした。寄生体としてIhが寄生したスケトウダラでは、筋肉に含まれるトリメチルアミンオキシド(TMAO)の分解が速やかに進行することが確認された。TMAOは分解するとジメチルアミンとフォルムアルデヒド(FA)が生成する。FAはタンパク質の変性剤であり、寄生体に何らかの作用をしていることが推察される。TMAOの分解にはAspolin酵素が作用する。Ihが寄生した魚肉中のTMAOase活性は亢進することも明らかとなった。 Ihが寄生した魚肉のTMAOase活性が亢進する原因について、Aspolinについて以下の分析を行った。Aspolinはアミノ酸の80%以上がAspで構成されている酸性タンパク質である。ポリAspを抗原として抗体を作成し、Aspolinの筋肉内での発現量を比較したところ、Ihが寄生した筋肉中で発現量が多いことが確認された。Ihが寄生した魚肉中では非常に興味深い生体内反応が起きていることが明らかとなった。
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