研究課題/領域番号 |
26660177
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
糸井 史朗 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (30385992)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フグ毒 / テトロドトキシン / TTX / クサフグ / ヒガンフグ / トラフグ |
研究実績の概要 |
本研究では、フグがどこからフグ毒TTXを獲得しているのかを明らかにすべく、これまでの予備的研究で得られているクサフグによるヒガンフグ卵の摂餌と、これがトラフグ属魚類におけるTTX獲得経路の一つであることを目的に、以下の試験・調査を実施し、興味深い成果を得ることができた。 クサフグによるヒガンフグ卵の摂餌が恒常的に観察されるか確認するため、ヒガンフグの産卵期にクサフグを採取し、腸内容物組成を調べるとともに、この時期のクサフグの各種組織におけるTTXの局在をLC-MS/MS分析により調べた。その結果、ヒガンフグの産卵期に採取したクサフグの腸内から、個体により量の多少はあるものの、卵が検出された。ミトコンドリアDNAを対象に、この卵の種判別を実施した結果、ヒガンフグの欄であることが確認された。この現象は、少なくとも4年間にわたって観察された。また、この時期のクサフグの組織に蓄積されるTTXの量は、メスでは皮膚および卵巣で他の組織よりも優位に多く、次いで肝臓に多かった。オスでは皮膚に最も多くTTXが蓄積し、次いで肝臓に多かった。これら雌雄のTTXの局在は少なくとも3年間にわたって同様なパターンが認められた。 このトラフグ属魚類における近縁種間での卵摂餌が効率的なTTXの摂取にあると考え、無毒のトラフグ種苗に有毒卵を与える飼育実験を実施した。有毒卵を摂餌したトラフグ種苗の各組織からTTXを抽出し、LC-MS/MS分析により定量した結果、有毒卵摂餌後2日後には皮膚、肝臓および腸管の順にTTXが蓄積・分布していることが確認された。なお、配合飼料のみを与えたトラフグ種苗からはTTXは検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒガンフグ―クサフグ間以外のトラフグ属魚類間での有毒卵摂餌については、確認できなかったため、検証を続ける必要がある。その他の項目については、自然環境下および飼育実験下でも再現性を確認することができ、投稿論文としてまとめ掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、ヒガンフグ―クサフグ間以外のトラフグ属魚類間での有毒卵摂餌については、計画を延長して調査を進めていく予定である。この中で、過年度とは時期をずらして試料採取を実施することで、トラフグ属魚類間での有毒卵摂餌を観察できるのではないかと考えている。また、これら試料については、体内の毒の分布についても調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先述の通り、ヒガンフグ―クサフグ間以外のトラフグ属魚類間の卵摂餌について、追加で調べる必要があること、また年度をまたいで試料採取を実施する必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の報告書にも記載の通り、トラフグ属魚類間での有毒卵摂餌を明らかにするため、継続的に試料を採取する(購入も含む)のに必要な試料採取時の旅費、分析試薬・器具類の購入等に使用する予定である。
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