従来、養殖魚介類の品質管理には、詳細な成分分析やDNA鑑別等の方法が用いられてきたが、どの方法も時間およびコストが膨大に必要である。ラマン分光技術を用いることで脂質やタンパク質等の成分検出を迅速、簡便かつ非侵襲的に測定できる。本研究では、国内外で生産される魚介類に含まれる主要成分(タンパク質、脂質等)や機能性成分(アスタキサンチン、タウリンおよび多価不飽和脂肪酸)について、ラマン分光法を用いて各成分の検出および定量方法の開発を行うことを目標にして研究を行った。平成26年度は、サケ類の主要カロテノイドであるアスタキサンチンの定量が可能となった。平成27年度は、イカ類や軟体動物に多く含まれる機能性成分タウリンの検出および定量、さらにマグロの多価不飽和脂肪酸、特にDHA、EPAやアラギドン酸の検出を行った。ラマン分光法を用いてイカ・タウリンの検出・定量に成功し、その結果は液体クロマトグラフィーで同じサンプルを定量した値とほぼ同程度であり、ラマン分光法の精度の高さを証明した。次いで、マグロの多価不飽和脂肪酸の検出では、ラマンスペクトルパターン類似していたため、多変量解析法を用いた大量のデータ解析により不飽和度の違いでDHA、EPAおよびアラギドン酸を区別することに成功した。実際に定量した値は、同サンプルを用いたガスクロマトグラフィー解析の結果と同程度であった。以上より、ラマン分光法を用いることでマグロの多価不飽和脂肪酸の検出が可能であることが証明できた。
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