研究実績の概要 |
稲WCSが県域を超えて広域流通する場合、ロールの生産費用と同等あるいはそれ以上に流通費用が掛かるため、効率よい物流体系を築くことが重要である。そこで、宮城県栗原市において圃場整備・圃場集積の進んだU地区とそうでないA地区を対象として集荷コスト最小化モデルを構築して、ストックヤードまでの最小集荷体系および最小費用を導出した。 U地区、A地区はそれぞれ、ストックヤードと最も離れた圃場距離が11.5km、11.8kmであり、圃場間の最大距離は13.5km、19.0kmである。1ロール当たり集荷費用はそれぞれ1,123円、1,578円となった。両地区とも10kmを超える遠隔圃場では10tトラックによる巡回集荷が選択されたが、費用抑制効果は小さかった。 以上の結果から、稲WCSの広域流通においては圃場集積が必須条件であり、その程度が流通圏域を大きく左右することが示された。また、本モデルに、ストックヤードから県外需要地点への輸送費用並びに需要を所与とすることで流通圏域の測定が可能となった。 国産粗飼料流通システム構築の商流上の条件として、以下のような点を明らかにした。第1に、粗飼料生産を自ら行い、畜産経営(実需者)に販売する主体の存在である。この主体は、畜産経営の委託により収穫作業等のみ受託するコントラクターと異なり、畜産経営との契約のもとに経営の一部門として粗飼料を生産する経営体を意味する。第2に、それら経営体と畜産経営を仲介する流通業者の存在である。広域流通になるほど品質の調整機能が必要になる。しかしながら、できる限りこのような流通業者を介さない狭い範囲での取引が、物流コスト抑制という視点からも望ましい。
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