研究課題/領域番号 |
26660183
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研究機関 | 鳥取環境大学 |
研究代表者 |
西村 教子 鳥取環境大学, 経営学部, 准教授 (00351875)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 農家男子の結婚 / 結婚難 |
研究実績の概要 |
本研究は農家の男子の結婚問題に着目し、その原因を農家自身が持つ経済的な要因とその他の社会経済的要因との格差よって説明しようとするものである。 日本の男子生涯未婚率は1980年以降急速に上昇しはじめ、2010年には20.14%に達している。 結婚難はまず性比アンバランスから説明される。結婚適齢年齢の20-39歳の性比は1.03と高く、日本全体で男子が多い現状にある。特に市部に比べて郡部の方が性比は高くなっている。この現状の中で、男女別の未婚率と人口密度の関係を見ると、人口密度が低いほど未婚率が低下する傾向にあるのに対し、男子はU字カーブを描いており、農家男子の厳しい結婚環境が窺える。 本年度は『2010年農林業センサス』の個票を用い、30-49歳の農業経営者と同居後継者を対象にて、本人の就業状態、所属する農家の農業経営状態や家族構成から以下のような特徴を明らかにした。(1)農家男子の結婚確率は農林業収入に規定される。(2)男子が農外就業であると結婚確率は高くなる。(3)母親や姉妹との同居は結婚確率を大きく低下させ、特に彼女たちの農業への関与が強いほどその確率が下がる。(4)環境保全型農業、農業関連事業や農産物の直接販売の実施などの経営改善の取組みは結婚確率をわずかであるが高くする。(5)地域の同世代の男子よりも低い。 以上の結果は、男子の結婚には安定的かつ一定以上の世帯収入の確保と家族と農業との分離が必要であることがわかった。現在の日本の農家の多くはその主たる収入を農外に求め、農林業の収入は極めて低い中、農業経営は家族労働力に依存している。これらの現状が女子の結婚の条件との乖離をもたらしていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究計画の初年度であり、研究の主たる目的は農家男子の結婚難の状況とそのメカニズムの解明のための計画の妥当性を検証することであった。 (1)2010年の『年国勢調査』から、農業従事者の男子年齢別未婚率はそれ以外の男子年齢別未婚率に比べて高いことが示した。この結果、農家男子の結婚難は妥当であると言える。 (2)男子結婚難を農家間の経済的格差に着目し、『2010年農業センサス』の個票を用いて分析を行った結果、農家男子の就業状況や農業経営状況といった本人や世帯の収入の低さが結婚を困難にさせていることが明らかになった。 (3)このことから、農家の結婚難の解明に一般的な結婚モデルを応用できることが示された。 今年度の計画をおおむね遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果をもとに、農家の世帯収入状況をより詳細に把握するとともに非農家との格差に着目した研究を計画通りに遂行する予定である。 研究を遂行するにあたって直面する当面の課題は、使用を予定している公的データから農家を抽出する方法の確立である。そのため、このデータ整備上の課題の検討と検証が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料整理等の作業量が計画時よりも多く発生することが判明し、人件費の支出計画の見直しが必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
これら資料整備等に必要な人件費に使用する予定である。
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