本年度は、大きく、以下の2点を実施した。第1に、これまで実施した都道府県に対するヒアリング調査の結果得られた、都道府県が抱える海域におけるトランスバウンダリー問題を、地理情報システム(GIS)を用いて可視化した。第2に、日本の沿岸域が抱える海域におけるトランスバウンダリー問題の実態を把握するために、昨年度実施した質問票調査の結果を、1)統計ソフト(SPSS)等を用いて分析し、2)地理情報システム(GIS)を用いて結果を都道府県別に可視化し、3)質問票作成に際し、ご協力いただいた水産庁資源管理部漁業調整課に結果報告を行った。 質問票回答数は、47都道府県のうち33都道府県、36件の回答数を得た。質問票は以下の大きく5つの部分、1)県管轄海域に存在する課題(漁業紛争、沿岸域資源、2)課題解決のための行政界設定の有効性、3)行政界の管理(管理主体、管理対象、管理エリア)、4)課題解決のための行政界設定の非有効性、5)回答者の属性(回答部署、海洋分野での経験年数等)、で構成されている。 回答結果を以下に、まとめる。 1)共同漁業権漁業の漁業紛争の主な解決策として行政界が設定されている。2)県知事許可漁業の漁業紛争の主な解決策として共同漁業海域が設定されている。3)「沿岸」の定義が曖昧である。4)海洋資源の利用については事例が少なく、今後の課題である。5)沿岸域資源の利用について、再生可能性エネルギー開発に対する関心が高い。6)共同漁業権者の高齢化・減少及び水産資源の減少により共同漁業権区域の管理が難しくなった(未利用や荒廃)エリアは現時点で非常に少ない。7)沖合域において、漁業上の境界が明らかでないため、取り締まりが十分に機能していない。8)トランスバウンダリー問題の解決について、「行政界設定の有効性」には賛否両論がある。9)漁業関係者のみならず、関係者との調整システムが必要である。
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