研究課題/領域番号 |
26660188
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐々木 長市 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30162374)
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研究分担者 |
松山 信彦 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (20261430)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カドミウム / 複合汚染 / 客土 / 銅 |
研究実績の概要 |
カドミウム汚染農地から採取した水田土及び人工的に銅濃度を汚染基準以上にした土を用い、成層水田の模型を作製しその浸透型(開放浸透、閉鎖浸透)を切り替えて、稲の生育収量及び玄米中のカドミウム濃度を測定した。その模型は、作土(10cm)、すき床(10cm)心土(約45cm)とし、汚染土及び非汚染土を所定の密度で充填し作製した。試験には、カドミウム濃度が約2ppmの土を用いた客土厚20.0cm及び25.0cmの模型4と銅濃度150ppmで客土厚12.5cmを目標とした模型2の合計の6模型を用いた。 その結果、各模型の開放浸透層は酸化層となり、閉鎖浸透層は還元層となった。このことより、稲のカドミウム吸収が旺盛な出穂前後3週間の根環境の相違が明確な試験条件となった。統計処理の結果、草丈や茎数などの生育及び穂数や玄米数などの収量における有意差は認められなかった。しかし、開放浸透層を下層に持つ模型の玄米中のカドミウム濃度は、客土厚12.5cmで0.17ppm、客土厚20cmで0.1ppm、客土厚25cmで0.05ppmとなった。これらの値の間に5%水準の有意差が認められた。更に、全層閉鎖浸透模型では、玄米中のCd濃度は、いずれも日本の非汚染地の玄米濃度以下となった。このように、浸透型の違い、及び客土厚の相違により玄米中のCd濃度が大きく異なることがわかった。銅を用いた模型でも玄米中の濃度は、開放浸透層を持つ模型が全層閉鎖浸透層模型に比べ、高い値となることが判明した。 成層水田模型の6模型において、複合汚染となるヒ素や鉛の濃度も測定したが玄米中の 濃度における有意差は明確とはならなかった。本研究により、農地の土壌汚染対策に重要な客厚の最小化や汚染が浸透型により制御されることは実際の復旧工事における費用の低減や環境破壊の改善の一助となる意義が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年目は、汚染農地の実態解明を実施し、2年目は汚染農地の模型を作製し、浸透型を明確にしつつ、生育収量や銅やカドミウムの濃度を相違を解明する予定であった。2年目は、8模型を作製し、銅やカドミウムの汚染と玄米中の濃度などを解明でき、かつ論文を受理されたことより、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
銅汚染模型の稲の生育収量及び銅の吸収特性の解明を進める予定である。具体的には、銅汚染土壌を農地の汚染濃度基準125ppmより 大きな値の2模型と小さな値の2模型を作製し、下層の浸透型を制御し、影響を解明する計画である。この濃度の制御は、混層耕という方法をとるが、室内実験で所定の濃度の土を作製し、客土厚を12.5cmとして実施する予定である。また、生育収量調査の他に、土壌及び玄米中のヒ素などの濃度測定をし、複合汚染対策に混層耕が有効であることを、浸透型を明確にした条件下で解明する予定である。
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