本研究では、日本一のりんご産地である青森県のリンゴ園における重金属濃度の鉛直分布とその影響が懸念されるカドミウム(Cd)、ヒ素(As)及び銅(Cu)を中心として、重金属濃度の実態解明と水田転換時のCd及びCu等の複合汚染農地対策を中心に検討した。 初年度は、沖積土、クロボク土、褐色森林土からなるリンゴ園地で、ライナー採土器で深度別に土を採取し重金属濃度分布を調査した。その結果、クロボク土樹園地の表層土で日本の樹園地のCd平均値のより1.5倍、Asでは20mg/kg台、亜鉛で400mg/kgと高かった。Cu濃度は、褐色森林土下層で125mg/kgを越えていた。樹園地によりかなり変動が激しいことが分かった。労働力不足からこのような樹園地を水田戻した場合は、重金属の影響が懸念された。 2年目は、客土(12.5cm)をもつCd汚染成層水田模型を作製し、下層の汚染土にCdを想定し、この濃度を0.5mg/kg、1.0mg/kg、2mg/kgに希釈し、かつ下層の浸透型(閉鎖浸透と開放浸透)を制御し、薄い客土の場合の混層耕の効果を調査した。その結果、同一客土厚では、下層のCd濃度を1.0mg/kg以下にした場合、玄米中の濃度が非汚染地のCd濃度と近似し、安全(危険率5%)であることを浸透型の如何にかかわらず明らかにした。 3年目は、Cd汚染土濃度を2mg/kgとし、客土厚(12.5cm、20.0cm、25.0cm)と浸透型を制御した成層水田模型を作製し、玄米中のCd濃度への影響を調査した。その結果、客土厚が25cmの成層水田模型の玄米中のCd濃度は、浸透型の如何にかかわらず、非汚染地の玄米中のCd濃度と同じくなった。しかし、20cm以下の場合は、汚染米となることが判明した。 以上のことより、浸透型を明確にした汚染対策の有効性が明らかとなった。
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