研究課題/領域番号 |
26660190
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
福田 信二 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70437771)
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研究分担者 |
鬼倉 徳雄 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50403936)
向井 貴彦 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (80377697)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子かく乱 / 生物多様性 / 生息環境 / 数値地図情報 / 空間分布モデリング |
研究実績の概要 |
今年度は、関東の主要河川のうち、多摩川(9地点地点)、荒川(3地点)、利根川(8地点)の各水系における計20地点において、モツゴの遺伝子かく乱の現状調査を実施した。各地点10個体の遺伝子分析の結果、多摩川水系では大陸型および西日本型の個体の移入が確認され、特に、大陸型の遺伝子を有するモツゴが多かった。荒川では、場所により、大陸型と西日本型の遺伝子を有するモツゴが確認された。利根川水系では、手賀沼および印旛沼において調査したが、結果として、一部のモツゴで大陸型の遺伝子が確認されたものの、多くは東日本型の遺伝子を有しており、遺伝子かく乱の進行は進んでいないことが示唆された。以上の分析結果を総魚種数や移入種数と比較したところ、明瞭な関係性はみられず、水域ごとに特徴づけられる結果となった。これは、外来遺伝子の移入が、他魚種(例えば、商業価値の高いアユ等)の放流に付随して発生したことを示唆している。すなわち、商業価値の高い魚種の放流履歴(時期と放流量)によって各調査地点における遺伝子かく乱度を特徴づけられる可能性がある。しかしながら、捕食-被食等の種間関係も考慮する必要があり、遺伝子かく乱のメカニズムの解明には更なる研究が必要である。 その他、モツゴが海外においては侵略的外来種として認識されていることから、モツゴが有する移入種としての特性を評価するために、functional responseの一つとして捕食特性を実験的に評価した。結果として、餌生物や地域ごとに捕食特性が異なることが明らかになり、体サイズによって捕食量が異なることが確認できた。個体数の影響は限定的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象生物であるモツゴの採捕が遅れたため、研究期間を延長することになったが、着実に成果が出てきており、今後の定量的な評価結果によって、遺伝子かく乱リスクの高精度モデリングの基盤が強化できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの成果をとりまとめ、遺伝子かく乱予測モデルを構築するとともに、捕食特性に関する成果のとりまとめと論文化を進める。予測モデルの構築の際には、ランダムフォレスト等の高精度な機械学習を援用し、変数の重要度や応答曲線等により、支配要因等に関する定量的な情報を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、研究対象であるモツゴを多摩川水系、荒川水系、および利根川水系で採捕し、遺伝子解析を進める予定だったが、当初予定していた期間中にほとんど採捕できなかったため、調査期間を9月まで延長した。また、Functional responseに関する実験を追加したため、その成果発表のためにも期間の延長が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子解析の結果から、遺伝子かく乱予測モデルのプロトタイプを構築し、成果を発表する。また、Functional responseの成果をとりまとめ、学術誌に発表する。
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