研究課題/領域番号 |
26660197
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中野 浩平 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20303513)
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研究分担者 |
松尾 誠治 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20302755)
竹谷 敏 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (40357421)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農業工学 / ポストハーベスト工学 / ハイドレート / 鮮度保持 / 二酸化炭素 / 青果物 |
研究実績の概要 |
高圧CO2環境下に青果物を暴露してその内部にCO2ハイドレートを生成させ細胞内水の流動性を低下させることを基本原理とする品質保持技術の開発を目的に、以下の試験を実施した。まず、ニンジン等の種々の青果物を3MPaのCO2ガスと共に容器内に封入し、2℃で3~24時間反応させた。反応後、X線回折法により結晶構造解析を行うと共に、圧力法によりCO2ハイドレートの生成率、浮力法により空隙率、105℃-24時間法により含水率を測定した。X線回折パターンからCO2ハイドレート由来のピークが含まれ、青果物内の水が構造化されるのを確認した。また、CO2ハイドレート生成率はニンジンとナスがそれぞれ6、12時間で最大値に至り、その後、一定となった。各種青果物を12時間反応させた場合では、生成率は品目によって異なり、特に空隙率と含水率が最も高いナスで最も高くなった。 次に、CO2ハイドレートの内部生成が青果物の品質に及ぼす影響を検討した。ブロッコリーとホウレンソウを耐圧容器内で4MPaのCO2ガスと反応させ、8℃で2週間貯蔵し、ビタミンC含量と一般生菌数を測定した。さらに、CO2ガスの圧力を3MPa、温度を2℃にして3~24時間反応させた時のニンジンの硬度をレオメータで測定し、反応前後の変化率として評価した。ホウレンソウのビタミンC含量は貯蔵前より減少し、CO2ガス条件下のほうが対照より多かった。一般生菌は、CO2が存在することで減少した。軟化率はCO2反応時間が長くなるほど著しくなった。 以上のことから、低温・高圧CO2処理によるCO2ハイドレートの内部生成は、内容成分の保持や菌の増殖抑制等、青果物の品質保持に有利な点が認められた。一方で、著しい軟化も認められ、反応後の軟化を抑制には内部生成されるCO2ハイドレートの量を制御する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO2ハイドレートの内部生成による青果物の品質保持技術開発に向けて、当初の計画どおりCO2処理条件を変えた実験を実施し、青果物品目によって生成率が異なることは、青果物組織内の空隙率や水分含量に関連していることなど、CO2ハイドレートの内部生成メカニズムを理解するための基礎的な知見が得られた。また、CO2ハイドレート生成による内容成分の保持効果や微生物増殖抑制効果についても明らかにされ、目的達成に向け順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、CO2ハイドレートの内部生成は青果物の内部品質保持効果を認めた一方で、著しい果肉の軟化といった外部品質の低下も認められた。これを抑制するには、CO2処理後の脱圧制御と同時に、内部に生成されるCO2ハイドレートの量をコントロールする必要があることが示唆された。そこで今後は、CO2ナノバブル水に青果物を浸漬するなどして、あらかじめ規定量のCO2を組織内に導入するといった前処理を施した上で、N2ガスで加圧処理を行うなど、細胞組織内で生成されるCO2ハイドレート量を制御するための技術検討を行い、実用化に繋がる基礎的な知見を積み上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
位相コントラスト型X線CTの使用を今年度は予定していたが、生成される炭酸ガスハイドレートの内部分布の解析まで研究が進まなかったために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
位相コントラスト型X線CTによるCO2ハイドレートの内部分布観察実験のために使用する計画である。
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