本研究では、作物の高付加価値化の観点から、植物葉の抗酸化能の強化を目的とした光環境制御技術における新たなブレイクスルーをめざし、光強度の時間変動と抗酸化能の関係を調べることを目的とした。 本年度は、レタスのベビーリーフ栽培をモデルとして、1)光強度変動を与える栽培試験方法の確立、2)光強度変動が植物の生育と抗酸化能に与える影響の調査、3)1日の積算光量を一定にし、明期時間を変えた際の生育と抗酸化能の調査を行った。 1)については、側面に蛍光灯を配したインキュベータ内で、栽培面上方に棒状のLEDランプを設置し、蛍光灯は常時点灯下で、LEDランプの点灯をタイマで制御することで、光強度の変動を与える試験栽培方法を構築した。2)に関しては、前述の栽培方法を使い、光変動条件(補光条件)がレタスの生育と抗酸化能に与える影響を調査した。 ベビーリーフの抗酸化能は、ORAC法を用いて、蛍光マイクロプレートリーダーにより、水溶性ORAC値として評価した。また、光強度変動の程度を定量化するために、光強度の変動係数や変化速度を算出し、生育やORAC値との関係を調査した。その結果、適度な光強度変動は、ベビーリーフの生育を促進する可能性が示されたが、抗酸化能に関しては、光強度変動区で高くなる場合があったものの、ばらつきが大きく、光強度変動の明確な影響は認められなかった。3)については、1日の積算光量を一定として、24時間一定強度の光照射を行う場合と、16時間、比較的強い光を照射した場合の、ベビーリーフの生育とORAC値を調査した結果、弱光24時間照射の方が、生育は向上したものの、抗酸化能は低下する結果が得られた。 以上の結果より、光強度の変動はベビーリーフレタスの生育や抗酸化能に影響を与える可能性が示唆された。更なる詳細な実験を通じ、光強度の変動を積極的に与える光環境制御法の実現が期待される。
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