研究課題/領域番号 |
26660202
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
水谷 孝一 筑波大学, システム情報系, 教授 (50241790)
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研究分担者 |
善甫 啓一 筑波大学, システム情報系, 助教 (70725712)
若槻 尚斗 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40294433)
前田 祐佳 筑波大学, システム情報系, 助教 (20650542)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体計測 / くしゃみ音 / 咳音 / 音源方向推定 / 豚 / 健康管理 / マイクロフォンアレイ |
研究実績の概要 |
次の3研究課題について研究実績の概要を述べる (課題A): 咳・くしゃみ音の音源位置推定技術の確立(主に若槻、副として善甫が担当):複数のマイクロホン間に生じる音の到来時間差に基づく音源方向推定や、壁などでの反射を積極的に利用した時間反転波シミュレーションに基づく音場の可視化シミュレーションを行うことで、検出した咳・くしゃみ音の音源位置を、反射波や残響に影響されることなく推定する技術をある程度確立できた。 (課題B) 画像認識による個体の識別法の確立(主に水谷、副として前田が担当):協力を得ている研究機関の豚に対して個体を識別するための標識(例えば2次元バーコード状のマーカ)を付けることができなかったため、豚房(豚が居る小区画)内を動きまわる豚の個体の位置をカメラ画像から画像認識によるトラッキング技術を確立に至っていない。しかし、豚房上部にマイクロフォンアレイとともにカメラを取り付けることができたので、手動ながら複数個体の位置の同時把握を行うことができた。 (課題C) 豚個体別の咳・くしゃみ計測法(主に前田、副として水谷が担当):課題Aにより推定した咳・くしゃみ音と、課題Bにより識別された豚の個体と紐付けることにより、個体別の咳・くしゃみの回数計測を行った。ここで識別した個体の位置情報を音源方向推定により識別した咳・くしゃみ音の位置情報とできるだけ正しく対応付けるアルゴリズムを検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次の3研究課題について現在までの達成度について示す (課題A): 咳・くしゃみ音の音源位置推定技術の確立:つくば市内に所在する研究機関の豚舎内の豚房上部にマイクロフォンアレイを設置し、豚房外よりモニタリングできるシステムを構築した。全自動ではないが、咳・くしゃみ音を録音することができた。これらの結果の一部は、農業施設学会を含め4学会で発表した。 (課題B) 画像認識による個体の識別法の確立:豚に対して識別のための2次元コード表示ができなかったため、画像認識による個体識別実験ができなかったものの、マイクロフォンアレイに付随して取り付けた広角カメラによって、豚体の映像を捉えるハードウエアの構築は完了した。次年度は2次元コードを用いることなく、豚体の特徴量を利用して個別識別する方向で検討中である。 (課題C) 豚個体別の咳・くしゃみ計測法:(課題A)と(課題B)との組み合わせによって実現する課題である。前述のように(課題B)において豚への2次元コードを施すことができなかったので全自動ではないものの、基本的には個別識別機能を備えた計測法を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(課題A)特に問題はないので、常時計測ができる体制を整備するとともに多くの実験データを取得して精度を高めるようにする計画である。 (課題B)豚体に対して2次元コードを施すことが難しかったので、豚体自体の特徴量を抽出する方法に切り替えて個別識別手法を検討する。実現すれば2次元コードを施すよりも汎用性が高くなる。 (課題C)(課題B)を導入して自動化を図りたいと考えている。 (課題D)大規模データを取得:豚の咳・くしゃみ音検出システムを運用することで、大規模な豚舎全体にわたり豚の咳・くしゃみ音の常時計測を行なう。咳・くしゃみ音は長距離では正しく検出することが難しいことが想定されるため(長くて10メートル程度)、広い豚舎内の全体モニタリングのために、(課題C)までで構築した検出システムを複数台でネットワーク化させ、データを最終的に統合する予定である。 (課題E) 動的データベースの構築:(課題D)により構築されたシステムで得られる情報を長期的に渡り保存する。さらに、生データの同時保存により、豚個体別の行動計測(水を飲んだ、殆ど動かない など)も行い、咳・くしゃみの回数などと併せて、豚個体別の状態を自動更新する動的データベースを構築する。養豚場(つくば市内)への設置を検討しており、現場参加型アプローチでの潜在的リスクの発見を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度中に計画していた実験の一部が、豚舎を借用している施設の関係で、平成27年6月に変更せざるを得なくなったため、それに必要な物品費等を平成27年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越しをする735,676円は物品費と人件費であるため、平成27年度においても当初の計画の通り、635,676円を物品費に、100,000円を人件費・謝金として使用する予定である。
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