研究課題
黒毛和種などの肉用牛の育種改良は、産肉形質に関しては大幅に改良が進んできているが、繁殖能力の低下が問題視されている。しかし、産肉形質と繁殖形質は調査する個体が異なるため、両形質が同時に調査された報告はない。そこで本研究では、黒毛和種繁殖雌牛2集団を用いて、産肉形質のDNAマーカーが、繁殖形質に対する影響を調査した。産肉形質に対するDNAマーカーとして、SCD遺伝子内のc.878T>C多型 、FASN遺伝子のg.841G>C多型 、DGAT1遺伝子のK232A多型、EDG1遺伝子のg.1471620G>T多型、DGAT-1遺伝子のK232A多型、CW-1領域内に存在するPLAG1遺伝子のss319607405マイクロサテライト多型の合計5つの多型を対象とした。集団に対する多型解析および統計解析の結果、SCDマーカーにおいて兵庫県集団では対象形質との関連は認められなかったが、岐阜県集団では初産月齢、バラの厚さ、脂肪交雑基準値で有意な差が認められた。全ての形質でAアリルが形質に好ましいアリルであった。FASNマーカーにおいて岐阜県集団では、対象形質との関連は認められなかった。DGAT1マーカーにおいては兵庫県集団では初産月齢、ロース芯面積と脂肪交雑基準値で有意な差が認められた。岐阜県集団では初産月齢、枝肉重量とバラの厚さで有意な差が認められた。PLAG1マーカーにおいては兵庫県集団では枝肉重量と脂肪交雑基準値で有意な差が認められた。岐阜県集団では初産月齢、枝肉重量、ロース芯面積と脂肪交雑基準値で有意な差が認められた。EDG1マーカーにおいて、兵庫県集団では対象形質との関連は認められなかったが、岐阜県集団では初産月齢、ロース芯面積、バラの厚さ、脂肪交雑基準値との関連が認められた。兵庫県集団では過去に報告のあった脂肪交雑基準値との関連が認められなかった。これらの結果は、産肉形質関連遺伝子マーカーが産肉形質だけでなく、繁殖形質と関連していることを示唆していた。
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Anim. Sci. J.
巻: 86 ページ: 737-746
10.1111/asj.12357