研究課題/領域番号 |
26660213
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
村上 昇 宮崎大学, 農学部, 教授 (80150192)
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研究分担者 |
小林 郁雄 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20576293)
中原 桂子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90315359)
北原 豪 宮崎大学, 農学部, 助教 (90523415)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グレリン / 体温低下作用 |
研究実績の概要 |
我国の夏期の全国的な高温化は深刻な状況にあり、夏期の家畜の損耗における経済的損失は約8百億円近くに及ぶと言われている。これには、牛や豚の繁殖率・受胎率の低下、乳牛での乳量および豚の増体率低下などが含まれている。一方で、現在でも人を含め熱中症の有効な治療薬は開発されていない。最近、胃で合成され、血中へ分泌されるデスアシルグレリンに極めて強い体温低下作用があることを発見し、ラットにおいてデスアシルグレリンの投与が高温下(33度以上)での致死率を著しく阻止することを発見した。そこで、このデスアシルグレリンの家畜の応用的研究を展開し、夏季の家畜の損耗による経済的損失への防止効果を検証した。これまでの予備実験では本学の附属牧場の乳牛2頭、和牛3頭を用いて、夏季(気温30度以上の日)に牛合成デスアシルグレリンを10 ul/kg単一末梢投与した。その結果すべての牛において、体表体温(サーモグラフィー)の低下と直腸温が有意に低下した。そこで、さらに本実験では、和牛6頭、乳牛6頭を用いて、デスアシルグレリンの投与量依存性の体温低下、および体温低下持続時間を詳細に検討した。しかし、グレリンおよびデスアシルグレリンを黒毛和牛(成牛)および乳牛に投与したが、今回は顕著な体表体温の低下は認められなかった。恐らく、外気温がそれほど高くなく、体温の上昇が顕著に表れなかったことが原因と推察された。平成27年度には外気温が30度以上を越える条件下で行うつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は和牛および乳牛のデスアシルグレリンの体温低下作用や他の生理機能への影響について検討する計画であった。その結果すべての項目の実験が行われた。しかしながら夏の気温がやや全体を通して低かったことが原因でグレリンの効果の評価が難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年の実験を再度行うと同時に以下の2点を実施する。まず、牛におけるデスアシルグレリンの高温下における受胎率向上への検証として、宮崎県内の農家、および附属牧場において、デスアシルグレリン投与による体温低下作用を利用し、夏季の受精卵移植もしくは人工受精時での受胎率向上実験を行う。また、ラットにおける高温下でのデスアシルグレリンの安全性評価、投与量評価、各種生理機能への評価(循環器系、呼吸系、運動系、代謝系、内分泌系)を行う。ラットにデスアシルグレリンを多量に投与し、致死量を求める。元来デスアシルグレリンは内因性物質であり、投与するデスアシルグレリンは各種動物のものを使用するので異種蛋白質として作用しない。主に投与量に対する各種血液生化学・ホルモン検査、尿検査を行う。また解剖後の各種臓器重量や組織形態学検査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物飼育飼料が年度超えて必要となったため
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次年度使用額の使用計画 |
実験動物飼料購入の一部として使用予定である。
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