【ラットを用いた短鎖脂肪酸吸収動態確認試験】昨年度ラットを用いた短鎖脂肪酸 (SCFA)吸収能確認試験を行い,個体によって吸収能が著しく弱い個体が存在することを示したが,今年度は追加分析を行うことで,その要因を推定できるか検討した。その結果,吸収が著しく弱い個体に共通するようなパラメータは確認出来なかったが,盲腸内容物中または粘膜中の腸内細菌構成を網羅的に解析した結果,SCFAを盲腸内へ注入することで,短時間で細菌構成が変化することが確認出来,とくにn酪酸を注入したラットは腸内細菌の変動が顕著であることが確認出来た。とくに,酪酸生成菌であるRoseburia属菌の占有率が粘膜で約10倍高値を示したことは興味深い。 【ブタを用いたインビボでの大腸発酵性未利用資源の有効性確認試験】昨年度に国内で余剰している未利用資源の,発酵安定性及びSCFA生産能を基準にした選定を完了していたため,今年度は育成期仔ブタを用いたインビボでの給与効果について検討を行った。即ち,育成期仔ブタ12頭を3群に分け,基礎飼料中にビートパルプ,菜種ミールまたはα化デンプンを5 %添加し,3週間飽食条件で給与した。試験期間中は,下痢などはほとんど認められず,全頭健康であった。3週間後に剖検し,回腸および盲腸内容物,回腸および盲腸粘膜,回腸および盲腸静脈,門脈,腹部大動脈および大静脈中のSCFA濃度およびアミノ酸濃度を測定した。 その結果,菜種ミール給与群の増体が他の給与群よりも高値を示した。増体と相関したパラメータは,門脈血中のプロピオン酸およびn酪酸濃度が正の相関傾向を,および動―静脈差のフェニルアラニン,ロイシン,イソロイシン,リジン,ヒスチジンおよびバリンなど多くの必須アミノ酸が正の相関を示した。以上の結果から,育成期仔ブタの飼料中トウモロコシから未利用資源への代替を考える場合,菜種ミールが第1候補として提案できた。
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