ヒト、動物の日本脳炎ウイルス(JEV)に対する感受性は加齢に伴って低下することが知られている。本現象の背景にはJEVの標的細胞である神経細胞の分化・成熟レベルが関与していると考えられており、加齢に伴って分化・成熟した神経細胞は胎生期、新生子期の未熟な神経細胞に比較してJEV感受性が低いことがin vivoの動物実験によって示唆されている。しかしながら、その詳細な分子メカニズムは不明である。そこで、分化依存的にJEV感受性の低下を示すラット中脳由来神経細胞株CSM14.1をin vitroモデル系として用い、分化状態によって発現が変動し、かつ神経細胞のウイルス感受性に関与する未知の宿主遺伝子を同定・機能解析する目的で、以下の実験を行った。 未分化CSM14.1細胞は分化CSM14.1細胞に比較してより多くのウイルス粒子を細胞内に取り込む。平成26年度は、未分化CSM14.1細胞での発現が分化CSM14.1に比較して高い遺伝子群(マイクロアレイ法にて同定)のうち、エンドサイトーシスに関連する候補遺伝子4個をクローニングし、発現コンストラクトを作成した。また、分化CSM14.1細胞での発現が未分化CSM14.1細胞に比較して高い遺伝子群のうち、エンドサイトーシスに関連する候補遺伝子3個をクローニングし、発現コンストラクトを作成した。 平成27年度は、これら発現コンストラクトをCSM14.1細胞に導入し、蛋白発現を確認した。未分化CSM14.1細胞での発現が分化CSM14.1に比較して高い遺伝子2個(エンドサイトーシスの促進因子とケモカイン)、および分化CSM14.1細胞での発現が未分化CSM14.1細胞に比較して高い遺伝子2個(いずれもエンドサイトーシスの抑制因子)を選別し、未分化CSM14.1細胞に過剰発現ないしノックダウンすることによるJEV感受性の変動を解析している。
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