研究課題/領域番号 |
26660223
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
廣井 豊子 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (30305643)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低分子量GTP結合タンパク質 / ARF / KLF / 炭疽 |
研究実績の概要 |
平成26年度の検討として、炭疽菌毒素受容体ATRのうちTEM8を優位に発現するヒト組織由来樹立細胞HeLa細胞およびCMG2を優位に発現するHuvec細胞を用い、PAならびにLeTX (PAとLFの複合体)の細胞侵入/細胞内移行に関わるホスト細胞内の因子の探索を行なった。PAの受容体への結合/細胞内侵入の有無は、重合形成したPAをNative PAGE後のWestern blotで検出することにより、またLeTXの細胞質内侵入はLFの活性であるMAPキナーゼ経路阻害をERKのリン酸化の減少を指標に測定する事で判定した。毒素処理の時間依存性を検討した実験結果より1~4時間のLeTX 処理後で重合体PAの形成やERKのリン酸化の減少が見られ、毒素が細胞受容体に結合し細胞内に侵入している事が確認できた。LeTX 処理によりERKのリン酸化が顕著に抑制されている細胞からRNAを抽出し、種々の生体内シグナル因子のmRNA発現量を毒素処理群と非処理群で比較したところ、細胞骨格アクチンの重合や細胞膜/小胞の動態に強く関わっている低分子量GTP結合タンパク質およびその活性調節因子に変動が見られた。特に、これまでに炭疽菌毒素の細胞内侵入に関わっている可能性が示唆されている低分子量GTP結合タンパク質Rhoの活性調節因子の変動に加え、新たに複数のARF関連因子が変動しており、ARF群因子が新規の侵入関連因子の候補として考えられた。さらに、これまでに関与が報告されていない転写因子KLF2も炭疽菌毒素処理により変動していた。これら毒素処理により発現量に変化があった因子が、炭疽菌毒素の細胞内侵入に関与しているのかどうかの確認のため、関与候補因子の過剰発現用プラスミドおよび活性変異体過剰発現用プラスミドの作成を行った。各因子遺伝子の転写翻訳領域はPCRを用いて増幅しほ乳類細胞用の発現用プラスミドに導入した。さらにそれらの活性変異体は活性中心部位にアミノ酸置換が入るように核酸の変異をPCR法で導入し作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
用いたヒト組織由来樹立細胞株での炭疽菌毒素処理条件を決定し、炭疽菌毒素処理により、その発現量が変動するホスト細胞内シグナル因子の探索を行い、これまでの研究において報告のない複数の因子で、毒素処理による発現量の変動を見いだしている。これらの複数の毒素侵入関連候補因子の野生型、活性改変型の過剰発現細胞作成用の発現プラスミドの作成をほぼ終えた状態であるため、おおむね計画通りに進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度の検討で、炭疽菌毒素によって複数のARF関連因子の発現量に変化があることが明らかになったことから、H26年度に検討できなかったARF因子, ARL因子やARF群活性調節因子GEF, GAPに関しても、炭疽菌毒素処理による発現量の変化の有無を広く確認検討する。また、同様に毒素処理によって変動が見られたKLF転写因子群に関しても、検討できなかった分子種にも検討を広げる。 H26年度の検討で発現量の変化が見られた因子に関しては、野生型、活性改変型の過剰発現細胞作成用の発現プラスミドの作成を終了させ、野生型の過剰発現細胞ならびに活性変異体の過剰発現細胞を作成する。また、必要に応じ、市販のRNA干渉試薬処理による発現抑制細胞も作成する。これらを用いて作成した種々の毒素侵入関連候補因子の発現量変動細胞を用いて、炭疽菌毒素処理を行い、各因子の発現量の変動が侵入機構に関与しているかどうかの有無を明らかにする。また、これら因子の単独、あるいは複数因子の混合の発現抑制で、炭疽菌毒素の侵入ならびに活性発現抑制がみられるのかを検討する。
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