近年、小動物の高齢化に伴い、放射線治療を受ける動物が急激に増加している。しかし、X線や電子線を用いる放射線治療は、大きく成長したがんや悪性黒色腫、種々の肉腫などに効果が低いという欠点がある。したがって、この放射線抵抗性を克服するためには、放射線の効果を増強させる放射線増感剤を開発する必要がある。本研究ではがんに対する新たな治療戦略として、マイクロバブル(MB)と超音波を利用した新しい増感放射線療法の可能性に挑戦し、MB存在下での超音波照射に引く続く放射線照射が放射線誘発アポトーシスの増強効果を示すかどうかを明らかにすることを目的とする。 マウス扁平上皮癌細胞SCCVIIを60mmディッシュにて培養し、MBとしてソナゾイドを0.1%で加えて培養液を満たし、パラフィルムでシールし逆さにして10分静置後、水槽中にて下から中心周波数1 MHz の超音波をデューティー比10%(1000 cycle、PRF 100Hz)、34.3 mW/cm2で2分間照射した。照射後0、3、6、9、12、24時間後に細胞を回収・固定し、PIで染色してフローサイトメータによって細胞周期を判定した。超音波照射単独群では、G1期分画は増加傾向を示し、6時間後に最大となった。S期分画は初期と後期に分けたが、共に6時間後まで減少傾向を示し、その後増加した。G2/M期分画については減少傾向を示し、6時間後が最小となった。微小気泡併用群では、G1期分画は増加傾向を示し9時間後に最大となった。S期分画は、初期では6時間後に最小となった後増加し、12時間後に最大となった。後期では9時間後に最小となった後増加し、12時間後に最大となった。G2/M期分画は減少傾向を示し、9時間後に最小となった。以上をまとめると、超音波照射によって細胞周期が変動し、バブルを併用するとさらに細胞周期全体が3時間遅延した。
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