研究課題/領域番号 |
26660234
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
松井 基純 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20374762)
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研究分担者 |
羽田 真悟 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40553441)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第一卵胞波主席卵胞 / 黄体 / 共存・非共存 / 受胎率 |
研究実績の概要 |
平成26年度の計画であった、第1卵胞波主席卵胞と黄体との位置関係が人工授精における受胎率へ及ぼす影響について、調査を順当に遂行した。その結果、主席卵胞と黄体が同一の卵巣に共存する場合、受胎率が有意に低下することが示された。この調査では、大学付属農場と一般酪農家の2つの牛群を用いて、どちらの牛群においても同じ結果が得られたことから、本研究で示される現象が、ウシの繁殖生理として普遍的なものであることが示唆された。 臨床の現場では、自然発情における人工授精に加え、ホルモン処置による定時人工授精も広く普及しているため、定時授精において、第1卵胞波主席卵胞と黄体との位置関係が受胎率へ及ぼす影響について調べた。本試験については、まだ、十分なサンプル数が得られていないが、これまでの解析では、自然発情時の人工授精においてみられた結果と類似した結果が得られている。よって、ホルモン処置による定時人工授精においても、第1卵胞波主席卵胞と黄体とが同一卵巣に共存する場合には、受胎率が低下すると考えられる。 以上のように、平成26年度の研究から、第1卵胞波主席卵胞と黄体とが同一卵巣に共存するという状況が、受胎率を低下させる要因となっていることが示された。この現象の生理学的なメカニズムは不明であるが、主席卵胞と黄体との共存状態が、受精卵自体あるいは受精卵を取り巻く環境へ負の影響を与えることで、受胎率を低下させている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工授精と同様に畜産現場で実施される受精卵移植についても、第1卵胞波主席卵胞と黄体との位置関係が受胎率へ及ぼす影響について調べている。本試験では、受精卵移植技術者からの移植記録の提供を受け、データ解析を行っている。臨床現場での記録から、研究として信頼できるデータを抽出する作業に手間取っており、解析に時間を要している。よって、平成26年度の計画であった受精卵移植においての解析は平成27年度半ばに終了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究計画は、第1卵胞波主席卵胞と黄体とが同一卵巣に共存した場合、受胎率が低下する、という現象の生理メカニズムを解明することである。 現在、子宮内膜機能についての解析、主席卵胞の解析および黄体の機能の解析を始めており、卵胞と黄体の位置関係が、どのようなメカニズムによって受胎性に影響を及ぼしているかを明らかにすることが、平成27年度研究計画の最重要方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究発表および情報収集を目的とした学会参加について、帯広で国際シンポジウムが開催され、そのシンポジウムにおいて研究発表を行ったため、当初予定していた他の国内学会へ参加することができず、旅費の支出が少なかった。 受精卵移植に関する調査では、受精卵移植技術者からの移植記録の提供を受けて解析を行っているが、データの抽出などに時間を要しており、その進行状況が遅れたため、必要経費の使用も遅れ次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、生体から採取された卵胞、黄体および子宮の組織サンプルを実験室で詳細に解析する計画であり、遺伝子やタンパク質の発現解析などを行う。それらの解析には、測定キットなど高価な試薬類が必要となるため、解析に必要な物品費として使用する予定である。
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