研究課題/領域番号 |
26660234
|
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
松井 基純 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20374762)
|
研究分担者 |
羽田 真悟 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40553441)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 第一卵胞波主席卵胞 / 黄体 / 共存・非共存 / 受胎率 |
研究実績の概要 |
平成27年度以降の計画であった「なぜ第1卵胞波主席卵胞と黄体との位置関係が、受胎率に影響を及ぼすのか?」という課題について、生理学的メカニズムの解明を目指して、黄体、子宮および第1卵胞波主席卵胞の機能解析を行った。 黄体について、受胎性の良好な、第1卵胞波主席卵胞と黄体とが非共存する状態では、黄体の血流が多く、黄体の発育に伴う血中黄体ホルモン濃度の上昇が速やかであることが示された。 子宮について、組織中の黄体ホルモン濃度および黄体ホルモン受容体の発現が、黄体を有する卵巣に隣接する子宮角先端の組織においてのみ、他の部位と異なる発現動態を示した。 主席卵胞について、黄体の存在する卵巣に共存する主席卵胞は、非共存状態にある卵胞に比べ、直径が大きく、血流も豊富であったが、主要な産生ホルモンであるエストロジェンの分泌は、共存と非共存で差異は見られなかった。 以上のことから、第1卵胞波主席卵胞と黄体との位置関係が、相互の機能に影響を及ぼしていることが明らかになり、第1卵胞波主席卵胞と黄体が受胎性に及ぼす影響についても、両者の位置関係により差異が生じ、それが受胎性の違いを生み出していると考えられた。 また、子宮角の先端部は、付属する卵巣からの性ステロイドホルモンの影響を強く受けていることが示されたため、主席卵胞と黄体が相互に作用しながら、受精卵の存在する子宮角先端部の機能に影響を及ぼすことで、受胎性に関与していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主席卵胞と黄体との位置関係が受胎性に及ぼす影響のメカニズムを解明するための解析として、黄体、子宮および第1卵胞波主席卵胞の機能解析が順調に進んでいる。これらの解析は、主に、食肉検査センタ一からのと体サンプルを利用しているので、速やかに実施されている。 -方、受胎性に直接的に結びつく受精卵の状態について、主席卵胞と黄体との位置関係が与えている影響を継続的解析しているが、結果をまとめるに至っていない。受精卵の解析には、生体からの受精卵回収が不可欠であるが、未だ十分な個数の受精卵を集められていない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究計画は、本研究課題の焦点である、「第1卵胞波主席卵胞と黄体が共存した場合、受胎性が低下する」という事象およびその生理学的メカニズムを、畜産現場へ応用することである。 まず、受胎性に関わる第1卵胞波主席卵胞の位置を予測することが可能であるか否かという点、さらに、ホルモン処置などで、主席卵胞の発育する位置を制御可能であるかについて調べる。 さらに、人工授精後に、第1卵胞波主席卵胞を人為的に排卵させることで、卵胞の影響をなくした場合の受胎性を調べ、受胎率向上のための可能性を探る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究発表および情報収集を目的とした学会参加について、平成27年度の研究は、ウシ生体を用いた実験が多く、使用可能な実験牛の数的な制約により、十分なサンプル数を得るのに年度のほとんどの期間を費やしてしまった。そのため、学会参加登録までに、結果のまとめが間に合わず、昨年度に比べ、学会での研究発表が大きく減ってしまった。そのため、投与予定していた旅費の支出が少なかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、27年度に得られた複数の成果について、いくつかの学会で発表する予定である。 また、臨床応用を目指した試験として、多くの個体にホルモン処置などを実施するため、ホルモン剤、さらに内分泌状態の解析ためのホルモン測定キットおよび試薬が必要となるため、物品費として使用する予定である。
|