平成27年度以降の計画であった、「第1卵胞波主席卵胞と黄体が同一卵巣に共存した場合、受胎率が低下する」という生理現象の畜産現場への応用において、「授精後のホルモン処置による受胎率向上の可能性を探る」という課題について、27年度から継続して、授精後5日目にhCG投与による主席卵胞の人為的排卵が受胎率へ及ぼす影響を調べた。その結果、無処置では低受胎を示す主席卵胞と黄体との共存状態の場合、hCGによる排卵の誘起によって受胎率が大きく向上することが示された。 主席卵胞の除去による受胎性向上のメカニズムを探るため、排卵後5日目に主席卵胞を超音波ガイド下で吸引除去をした場合の受胎率を調べた結果、hCG投与によりみられた共存群での受胎率改善は確認できなかった。このことから、主席卵胞と黄体との共存状態における受胎率低下は、排卵後5日目までの主席卵胞の存在により引き起こされていることが示唆された。 次に、「第1卵胞波主席卵胞の位置は予測可能か?」という課題について、発情・排卵の前の周期における排卵前卵胞と黄体との位置関係が、排卵後の主席卵胞と黄体との位置関係に及ぼす影響について調べた。その結果、前周期において排卵前卵胞と黄体が非共存状態にある場合、排卵後に主席卵胞と黄体が共存する割合が有意に高くなることが示された。さらに、発情および排卵誘起を目的としたホルモン処置が、排卵後の主席卵胞と黄体との位置関係に及ぼす影響について調べた結果、発情誘起のためのPGF2αの投与は、排卵後の主席卵胞と黄体との位置関係に影響を及ぼさなかったが、排卵誘起を目的としたGnRH投与を加えた場合、排卵後に主席卵胞と黄体とが非共存状態になる割合が高くなる傾向が示され、ホルモン処置により主席卵胞と黄体の位置関係を制御できる可能性が示された。
|