研究課題
平成26年度は、炎症性腸疾患(IBD)、低グレードリンパ腫、および高グレードリンパ腫における制御性T細胞の分布の相違が形態的に明らかになり、その内容をVeterinary Pathology誌に投稿した。現在審査中であり軽微な修正の指摘をうけ、修正稿を投稿した。またIBDとリンパ腫のTCRクローナリティ検査と病理検査の一致率およびその予後調査に関する論文についてもそれぞれ学術論文として海外の科学雑誌に投稿しており、すでに現在審査中であるが、軽微な修正で受理される見込みである。当初計画にあったIBDおよび低グレードリンパ腫の罹患症例のMHCクラスIIの遺伝子型については現在解析が進んでおらず症例の絞り込みを検討中である。また罹患症例の保存血清におけるグルテン由来分子(グリアジンなど)に対する抗体および自己抗体の検討については、現在、蛍光抗体法とELISA法による検討を実施している。グルテン分子に対する抗体検査は、セリアック病診断には必須の項目であり、既にELISAキット等も市販されているため、本年度はイヌ用に調整して抗体価調査を実施しているが、現在までのところ有意なデータは得られていない。IBDと消化管低グレードリンパ腫の絨毛上皮内Tリンパ球の細胞型については上記のように制御性T細胞について調査した結果を公表しているが、腫瘍細胞の本体は同細胞以外のT細胞系細胞と予想されるため、今後腫瘍化したT細胞の特定を進めたい。
2: おおむね順調に進展している
病理形態学的な研究分野についてはおおむね順調に研究が進行していると評価する。また自己抗体や抗グルテン関連分子抗体についてもELISAによる評価系を犬用に改良する必要があるが、比較的多くの罹患犬の血清が平成26年度で収集できたため、平成27年度に一定の成果が得られるものと期待される。遺伝的背景については十分な絞りこみが現段階でできていないため、この部分については平成27年度になんらかのブレークスルーが必要であろうと考えている。
平成27年度は、慢性腸炎からリンパ腫に移行する際に腫瘍化がおこるリンパ球の同定やその機序の解明を病理分野の主な課題として取り組む予定である。また前年度に十分な症例数の血清が収集できたため、罹患症例の臨床データ(主に血清アルブミン値など)と自己抗体あるいは抗グルテン抗体の有無、リンパ腫への移行の有無などを調査する。遺伝的背景については、候補遺伝子の絞り込みが現段階では不十分なため、年度後半に検証する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Vet Immunol Immunopathol.
巻: In press ページ: In press
10.1016/j.vetimm.2015.03.005.