研究課題/領域番号 |
26660239
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
猪島 康雄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20355184)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エキソソーム / 生乳 / バルク乳 / 牛白血病 / 牛白血病ウイルス / 診断法 |
研究実績の概要 |
本研究は、タンクに集められた牛の生乳(バルク乳)からエキソソームを分離・精製し、牛白血病ウイルス(BLV)を検出、BLVの感染状況を農家単位で一括診断する手法の開発を目的とする。具体的には、以下の2点について研究を進める。 (1)牛の生乳から効率よくエキソソームを分離・精製する方法を確立する。 (2)バルク乳エキソソーム内のBLV成分(蛋白と核酸)を検出することにより、BLV感染状況を農家単位で全頭一括診断する手法を開発する。 本年度は、最初に、効率よく確実に乳エキソソームを分離・精製する方法の確立を検討した。非感染牛3頭からの生乳を用いて、ヒト・培養細胞用の市販エキソソーム分離キットによる乳エキソソームの分離を試みた。5種類の市販キットを用いて比較したところ、キットのプロトコール通りではいずれも乳エキソソームは分離できなかった。しかし、生乳中に多く含まれる脂肪球とカゼインを超遠心で取り除けば、乳エキソソーム分離にも利用できるキットがあることを明らかにした。次に、分離したエキソソーム量のウェスタンブロッティングによる評価系確立のために、ヒトエキソソームのマーカーとして知られている抗原を標的に、市販の抗牛抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った。標的としたマーカー抗原は、MFG-E8、CD9、CD63、CD81、Flotillin等を選択した。これらの抗体の多くは、ELISAやフローサイトメトリーで利用可能でも、ウェスタンブロッティングでは適用できなかったが、抗MFG-E8抗体、抗CD63抗体の一部は利用可能であることを明らかにした。このことにより、次に展開するBLV感染牛からの乳エキソソームの磁気精製・濃縮とBLV抗原の検出における、エキソソームコントロール評価系を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白血球中のBLVコピー数が明らかな2頭の感染牛から、BLV感染陽性コントロール乳を採材していたが更新(出荷)されてしまったため、継続的に実験に使えるBLV感染乳牛および協力農家を新たに見いだす必要があった。その時間が予想以上にかかってしまった。しかし、超遠心を何回も繰り返し、長時間かけて乳エキソソームを分離・精製する方法を、効率よく時間短縮することが可能となり、計画の遅れを取り戻せることから、最終的には目的を達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をもとに、乳エキソソームに特異的な表面抗原を標的とした、磁気ビーズ標識抗体を用いた磁気分離・精製法を確立する。ウェスタンブロッティングで乳エキソソーム検出に優れていたMFG-E8、CD63、およびウェスタンブロッティングでは利用出来なかったが、以前我々が磁気精製に利用したCD9に対する抗体と、磁気ビーズ標識二次抗体との抗体複合体を作成する。脂肪球、カゼインを取り除いた生乳、および未処理の生乳と抗体複合体とを混合し、乳エキソソームの磁気分離・精製を行う。精製後のエキソソーム量を、確立したウェスタンブロッティングによる評価系により比較し、エキソソームの磁気分離・精製に有用な表面抗原と抗体の同定、効率的な精製法を確立する。 確立した分離・精製法により、白血球中のBLVコピー数が明らかな感染牛の生乳からエキソソームを分離・精製し、乳エキソソーム内のBLV抗原をウェスタンブロッティングにより検出し、BLVコピー数と検出率の相関を明らかにする。感染牛のいる農場でバルク乳から分離・精製したエキソソーム内のBLV抗原および遺伝子を、ウェスタンブロッティング、PCR、LAMP法により検出、個体ごとに採取した乳エキソソームによるBLV抗原および遺伝子の検出結果と比較し、バルク乳検査による一括診断の実用性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する予定だったBLV感染牛2頭が、更新(出荷)されてしまい、感染牛と協力農家を新たに探すことになり、研究期間のはじめは実験できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目は、初年度に計画していた実験を精力的に実施することから、消耗品への支出を多く予定している。さらに、研究成果を学会発表、論文発表することを予定しており、旅費、英文校正料、オンラインジャーナル投稿料の支出を多く予定している。
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