本研究は、タンクに集められた牛の生乳(バルク乳)からエキソソームを分離・精製し、牛白血病ウイルス(BLV)を検出、BLVの感染状況を農家単位で一括診断する手法の開発を目的とする。具体的には、以下の2点について研究を進める。 (1)牛の生乳から効率よくエキソソームを分離・精製する方法を確立する。 (2)バルク乳エキソソーム内のBLV成分(蛋白と核酸)を検出することにより、BLV感染状況を農家単位で全頭一括診断する手法を開発する。 本年度はBLVに感染しているが発症していない比較的若い牛を選別した。前年度の成果をもとに、超遠心の繰り返しとエキソソーム分離試薬を併用することで得られた生乳エキソソームからBLV蛋白の検出を試みた。BLVのエンベロープ、及びgag蛋白を認識する3種類の抗体を用いたウェスタンブロッティングでは、BLV蛋白を検出することはできなかった。また、PCRやLAMP法によるBLV遺伝子の検出もできなかった。以前の実験では血中BLVコピー数の多い高齢牛の生乳エキソソームからはBLV蛋白が検出されたことから、ウェスタンブロッティングによる生乳エキソソーム内のBLV蛋白の検出感度は、感染牛の血中BLVコピー数と相関する可能性が示唆された。このことから生乳エキソソームを利用した新たなBLV感染牛のモニタリング手法・農家単位での一括診断手法の開発に向けた基礎的なデータを得ることに成功した。
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