研究課題
本研究では、犬猫の高齢性慢性疾患、特に循環器疾患(心不全)、腎泌尿器疾患(慢性腎臓病)、肝疾患(肝機能不全)、筋疾患(筋麻痺・運動障害)ならびに骨関節疾患(特発性骨関節症)に潜伏する遺伝子病(ファブリー病、ゴーシェ病、ポンペ病、ムコ多糖症、等)の高頻度潜在性を証明する研究である。すなわち、酵素スクリーニング等を用いて各疾患症例を同定し、その分子基盤を明らかにし、その疾患が十医療に占める割合(有病率)を産出することを目的とする。本年度は、濾紙血を用いた方法を確立する前に、全血から分離された白血球ペレットを用いた方法で、α-ガラクトシダーゼ(ファブリー病)、グルコセレブロシダーゼ(ゴーシェ病)、α-グルコシダーゼ(ポンペ病)、アリルスルファターゼAおよびB(ムコ多糖症VI型等)の活性測定法を確立し、犬および猫の対照値を設定した。一方、各種学会を通じて、各専門分野の獣医師にコンタクトをとり、これらの疾患の想定する病態を説明し、発症の可能性がある症例の情報を得た。その結果、ファブリー病(犬1頭)、ゴーシェ病(犬5頭)、ポンペ病(猫2頭)、ムコ多糖症(猫4頭)が疑われる症例について情報が得られ、これらについて白血球ペレットを用いた酵素活性測定等の検査を実施した。その結果、これらの症例の内、猫の3例において新たなムコ多糖症を同定した。さらに、その内の1例については、VI型でありARSB遺伝子に新規病原性変異を同定した。
2: おおむね順調に進展している
解析したすべての遺伝子病の同定には至っていないが、その内の1疾患(猫のムコ多糖症VI型)については、新規病原性変異を同定することに成功した。現在、遺伝子型検査法を確立して分子疫学調査を実施するとともに、この症例の臨床データおよび分子基盤について論文公表を準備しているところである。また、ゴーシェ病を疑った純血種犬の骨疾患がプロコラーゲン異常に基づく骨形成不全症である可能性が高まったので、その関連遺伝子の解析を開始した。上記のような成果に基づいて判断すると、本年度は計画を一部改変したものの、概ね順調に計画を実行して、着実な成果を上げることができていると考えられる。
当初の計画にあった濾紙血を使った各種酵素測定法を確立する。これには、α-ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α-グルコシダーゼの他、新たに神経セロイド・リポフスチン症のCLN1およびCLN2の関連酵素の活性測定も導入する予定である。また、尿素サイクル異常およびピリミジン代謝異常などの先天代謝異常症による肝機能異常も対象に調査する予定である。
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