研究課題
本研究では、犬猫の高齢性慢性疾患、特に心不全、慢性腎臓病、肝機能不全、筋麻痺・運動障害ならびに特発性骨関節症などに潜伏する遺伝子病(ファブリー病、ゴーシェ病、ポンペ病、ムコ多糖症、など)の高頻度潜在性を証明する研究である。すなわち、酵素欠損を検出するスクリーニング法を開発して、それらを用いて各疾患が疑われる症例を同定し、その分子基盤を明らかにして、それらの疾患が獣医療にどの程度潜在するかを明らかにすることを目的とする。本年度は、濾紙血を用いた簡易酵素スクリーニング法を開発した。本法に適用した酵素は、α-ガラクトシダーゼ(ファブリー病)、グルコセレブロシダーゼ(ゴーシェ病)およびα-グルコシダーゼ(ポンペ病)であった。その結果、犬および猫のα-ガラクトシダーゼ活性はヒトの活性の約5倍であった。犬のグルコセレブロシダーゼ活性は、ヒトの約40倍であったのに対して、猫の活性はヒトの半分程度であった。犬のα-グルコシダーゼ活性は、ヒトの活性の約1.5倍であったのに対して、猫の活性はヒトの約8倍であった。以上のように、これらの酵素は動物により大きく活性が異なることから、スクリーニングにはそれぞれの動物に対しての至適条件を設定する必要があることが判明した。また、本研究の経過によって同定されたムコ多糖症VI型の猫は、猫ARSB遺伝子のエクソン5に新規の1塩基欠失が同定された。この変異による疾患は、過去に報告された同遺伝子の2種類の変異よりも重症であることが示唆され、新たな動物モデルを提供するものと考えられた。また、本変異に関する遺伝子型検査法を開発して分子疫学調査を実施した結果、調査した猫集団の中には本変異は見出せなかった。さらに、ビーグル犬において、ポンペ病に類似する心筋の組織変化が認められた犬が同定されたため、現在、犬GAA遺伝子についてシーケンス解析を実施している。
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