研究課題
本研究では、乳房炎の起因菌である黄色ブドウ球菌に対する効果的な治療技術を確立すべく、黄色ブドウ球菌特異的ウシポリクローナル抗体を、ホルスタイン牛に黄色ブドウ球菌の死菌を皮下接種することで作出した。供試牛より採取した抗血清より精製した免疫グロブリンG(以下、抗黄色ブドウ球菌抗体)を、黄色ブドウ球菌のin vitroでの培養液中に添加したところ、驚くべきことに、黄色ブドウ球菌の増殖が阻害された。従来のワクチン学の概念では、ワクチンによって誘導される抗体の作用として、ワクチンの対象となる病原微生物の宿主細胞への接着阻止であったり、オプソニン化の亢進による貪食活性の亢進が有名であるが、本成果は、抗黄色ブドウ球菌抗体が直接的に黄色ブドウ球菌の増殖そのものを阻害できるという、ワクチンによって導き出される新たな効果を実証するものであった。次に、作出した抗黄色ブドウ球菌抗体が、黄色ブドウ球菌の特に表層にあるどの抗原を認識することで、黄色ブドウ球菌の増殖を阻害しているのかを明らかにすべく、黄色ブドウ球菌の中でも特に病原性に関与する細胞壁結合タンパク質に着目した研究を実施した。具体的には、大半の細胞壁結合タンパク質の形成に関わるSortase Aと呼ばれる酵素に着目し、細胞壁結合タンパク質の多くを欠損するSortase Aの変異株に与える抗黄色ブドウ球菌抗体の影響を評価したところ、野生株と同様に、Sortase A欠損株でも、抗黄色ブドウ球菌抗体の添加により、増殖が阻害されることが明らかとなった。本研究成果は、抗黄色ブドウ球菌抗体が認識する細胞壁結合タンパク質以外の分子からの刺激によって、黄色ブドウ球菌の増殖が阻害されていることを強く示すものであり、乳牛に対する黄色ブドウ球菌感染を予防・治療する上で、極めて重要な研究成果であった。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 1件)
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