研究課題/領域番号 |
26660247
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 康之 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (50553434)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | MRP14 / アジュバント |
研究実績の概要 |
本年度計画の一つが、大腸菌でのMRP14産生条件の検討である。これまで、6xHisタグ融合タンパク発現ベクター(pET28a)を用いてMRP14の作製を行っており、純度の高いタンパクを得ていた。本年度はタグなしMRP14の作製を目標として、切断・精製系が確立しているGST融合タンパク(pGEX-6P)として発現した後に、PreScission proteaseによる切断・精製を試みた。しかしながら、高い発現量ならびに精製度は得られず、他のシステムが必要であると考えられた。現状では、Hisタグ系において1Lあたり70 mgの精製MRP14を達成できたことから、当面はこのシステムを維持することが妥当であると考えられた。並行して、MRP14の構造活性相関解析のため、立体構造に基づきN末端側とC末端側の二つのEF handドメインを組換え体として作製しており、次年度にマクロファージ系株化細胞を用いた解析を行う予定である。 それとともに、本年度はin vivoにおけるアジュバント活性解析の第一歩として、インフルエンザワクチンモデルを用いてマウスを用いた解析を行った。ワクチン単回投与モデルにおいて、ワクチン抗原単独群と比べてMRP14 10 μg追加群ならびに50 μg追加群では高い抗体価が得られた。MRP14のアジュバント効果はワクチン低用量の時により顕著であり、MRP14 10 μgにおいても単独群と比較して3倍の抗体価上昇が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度目標の一つであるタグなしMRP14の作製についてはさまざまな試行をおこなったものの、高い発現量と純度を達成することができなかった。その結果、プロジェクトの進行が遅れてしまい、結果として本目標を断念せざるを得なかった。しかしながら、この項目は将来的な製品開発を目指したものであり、基礎研究を行う上での重要性は低いため、研究全体に与える影響は小さいと考えられる。実際には、Hisタグタンパクとしては、非常に高い発現量と純度を達成できており、コスト的にも問題の無いタンパク質アジュバントとしての可能性は大きく見出された。 当初計画では、本年度はin vitro系を用いたMRP14による抗原提示細胞活性化メカニズムの解明を行う予定であった。しかし、deletion mutantsの作製を計画に追加したため、本年度はin vitro解析を後にまわし、次年度計画であったin vivoにおけるアジュバント活性解析を先行し、10 μgという低用量でも活性が見られるといった良好な結果が得られた。 このように、当初計画からの変更点がいくつかあったが、研究全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、従来の計画通りin vivoでのアジュバント活性評価ならびにin vitroにおける抗原提示細胞活性化メカニズムの解明を行う。本年度は近年アジュバントの重要性が話題となっているインフルエンザワクチンモデルを導入することによってMRP14の有用性を明らかにしてきたが、次年度は当初の計画通り、細胞性免疫がその防御に重要であるLeishmania major原虫感染を用いて評価を行う。 また、in vitro系においてはマウスマクロファージ株化細胞Raw264.7を用いて、MRP14の詳細な性状解析を行う。現在作製中のdeletion mutantsを用いてMRP14の構造活性相関解析を行うとともに、TLRシグナリングを中心とした活性化シグナルについて解析を行う。また、本アジュバントの幅広い動物への応用性を検討するため、当初計画通り対象動物をイヌ・ネコ・ウシ・ブタとして、末梢血由来単核細胞を用いて、TNF-αの産生を指標とした活性化能試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のとおり、本年度は当初計画を変更してマウスを用いたin vivo評価を先行させて、in vitro解析を次年度に行うこととした。in vitro解析には、複数種の動物それぞれについてサイトカイン定量キットが必要であり経費を必要とする。このように本年度の計画変更が当初見積りよりも執行額が少なかった理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に変更はあったが、単に項目の順番変更であり本年度に研究を実行する予定である。そのため、前述のとおり未執行の経費については次年度に行うin vitro解析に使用する。
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