本年度計画の一つは、MRP14の構造活性相関解析のため、立体構造に基づきN末端側とC末端側の二つのEF handドメインを組換え体として作製することであった。そこで、まずこれら2つのドメインをコードする遺伝子をpET-28aベクターにクローニングした。次に、これらベクターを大腸菌(Rosetta2)に導入してHis-tagタンパク質としての産生を試みたところ、発現量が非常に低くNi-NTAでの精製が困難であった。マクロファージ活性化能や動物におけるアジュバント能を試験するには、LPSなど大腸菌由来の成分が混入しないよう高い精製度が求められるため、様々な発現・精製条件を検討したが研究期間中に達成することができなかった。MRP14はその高い免疫活性化能にもかかわらずこれまで研究があまり行われていないが、本研究のようにdeletion mutantsの作製が困難であることが一因とも考えられる。 昨年度までの研究からMRP14は生体内でMRP14陽性マクロファージの集簇を誘導することが明らかにされていた。このことから、MRP14による免疫活性化には集簇マクロファージによるMRP14の分泌というpositive feedbackが関与することが考えられる。このメカニズムの一端を明らかにするためMRP14ノックアウトマウスの作製を行い、MRP14のアジュバント効果が内因性MRP14に依存するかについて検討を行うことにした。CRISPR/Cas9システムを用いてMRP14ノックアウトマウスの作製に成功したが、繁殖に想定以上の時間を要したため、MRP14の投与実験は完了していない(2016年5月以降に必要数が確保できる見通し)。
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