研究課題/領域番号 |
26660250
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山縣 一夫 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授 (常勤) (10361312)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / 細胞評価 / メチロー |
研究実績の概要 |
In vitroでの細胞の分化誘導や、各種薬物の細胞応答試験では、細胞の状態変化を正確に評価する技術は必要不可欠である。これまでは、リポーター遺伝子の発現や移植結果、細胞の生死判定などによってなされてきた。一方、細胞分化やストレス応答によって、ゲノムのエピジェネティック状態が大きく変動することが近年知られてきている。申請者はこれまでに全身の細胞でメチル化DNAを生きたまま可視化できるリポーターマウス(メチローと命名)の作製に成功している。そこで本申請課題では、我々が開発したメチローマウスを用いて、細胞の分化や応答過程においてどのような核内構造変化が誘導されるのかを明らかにし、それら画像情報を定量的に表し指標化することで、エピジェネティクスに基づいた各種細胞の評価法を確立することを目的としている。26年度は、前年度より進めていたメチローマウスの解析を進め、細胞分化にともなって核内のヘテロクロマチンパターンに変化が見られることを初期胚やES細胞を長時間ライブセルイメージングを行うことで定量的に示すことに成功した。この成果をまとめて論文投稿を行い、Stem Cell Reports誌に掲載された。また、これまでに蓄積したノウハウや、さまざまな人的交流を活用して、長時間にわたって細胞や個体組織の核内をダメージなく高解像度に観察できる顕微鏡システムの構築と、その条件設定を行った。具体的には、使用しているスピニングディスク式の共焦点顕微鏡のディスク上のピンホールの大きさやホール間の距離を検討することで、より高解像な画像を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、26年度はメチローマウスの詳細な解析を行い、論文掲載に至った。また当初目的通り、長時間にわたって細胞や個体組織の核内をダメージなく高解像度に観察できる顕微鏡システムの構築を行うことができた。以上より研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、所属先を近畿大学生物理工学部に変え、そこで学生たちを指導しながらより一層研究を発展させたいと考えている。具体的には、メチローマウスを用いてES細胞から生殖細胞に分化する過程や、生殖幹細胞(multipotent germ stem cell, mGS)から体細胞に分化する過程におけるDNAメチル化状態の推移について、特に染色体セントロメア領域に着目しながら、いつ、どのように変換されるのかを生きたまま高精細かつ多次元的に観察する。それにより、核内DNAメチル化状態の動態と生殖細胞分化との関連について、新しい知見が得られるものと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属先の移動があったため、年度内だけでなく次年度の使用状況の予想が立たなかった。そこで、念のため年度内の使用を抑え、次年度につかえるようにした。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画を少し増やし、実験動物や消耗品、備品の購入に充てる予定である。
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